【政府統計】都道府県、市区町村別の家賃高額/低額トップ10 [e-Stat(政府統計): 都道府県・市区町村のすがた]
前回に引き続き、政府統計の総合窓口(e-Stat)の「都道府県・市区町村のすがた(社会・人口統計体系)」から、全国の都道府県・市区町村の家賃を取得しました。
今回は、都道府県別、市区町村別の高額/低額トップ10をまとめました。
[1] 都道府県別ランキング
[1-1] 高額トップ10
最も高いのは東京都でした。神奈川県とは1畳あたり千円の差があり、神奈川県と京都府でも600円の差があります。
地域 | 1畳当たり家賃 |
---|---|
東京都 | ¥5,128 |
神奈川県 | ¥3,898 |
京都府 | ¥3,282 |
埼玉県 | ¥3,276 |
大阪府 | ¥3,227 |
千葉県 | ¥3,198 |
兵庫県 | ¥2,872 |
愛知県 | ¥2,824 |
宮城県 | ¥2,753 |
静岡県 | ¥2,646 |
[1-2] 低額トップ10
最も家賃が安いのは青森県でした。最も高い東京都と比較すると、1畳当たり4千円の差です。
地域 | 1畳当たり家賃 |
---|---|
青森県 | ¥1,882 |
宮崎県 | ¥1,972 |
北海道 | ¥2,016 |
秋田県 | ¥2,016 |
鹿児島県 | ¥2,016 |
岩手県 | ¥2,021 |
愛媛県 | ¥2,047 |
高知県 | ¥2,058 |
山口県 | ¥2,079 |
熊本県 | ¥2,082 |
[2] 市区町村別ランキング
[2-1] 高額トップ10
市区町村別の高額家賃は、東京23区がトップ10を独占しています。港区に関しては、1ルーム10畳の部屋でも約9万円の家賃になります。
地域 | 1畳当たり家賃(円) |
---|---|
東京都 港区 | ¥8,992 |
東京都 千代田区 | ¥8,594 |
東京都 渋谷区 | ¥7,705 |
東京都 中央区 | ¥7,600 |
東京都 文京区 | ¥6,439 |
東京都 新宿区 | ¥6,431 |
東京都 豊島区 | ¥6,423 |
東京都 品川区 | ¥6,266 |
東京都 目黒区 | ¥6,252 |
東京都 中野区 | ¥6,192 |
[2-2] 高額トップ10(東京23区除く)
東京23区を除くと、大阪市24区の多くが上位を占めました。それ以外では、大阪市と同様に区がある横浜市と川崎市が上位にランクインしています。
地域 | 1畳当たり家賃(円) |
---|---|
大阪府 大阪市 西区 | ¥5,698 |
大阪府 大阪市 中央区 | ¥5,678 |
神奈川県 横浜市 西区 | ¥5,562 |
神奈川県 川崎市 中原区 | ¥5,275 |
東京都 武蔵野市 | ¥5,255 |
神奈川県 川崎市 川崎区 | ¥5,081 |
大阪府 大阪市 北区 | ¥4,966 |
京都府 京都市 中京区 | ¥4,957 |
大阪府 大阪市 福島区 | ¥4,899 |
大阪府 大阪市 浪速区 | ¥4,880 |
[2-3] 低額トップ10
家賃が最も安いのは、石川県 珠洲市でした。住んでいる方には失礼かもしれませんが場所が分からないので調べたところ、能登半島最先端(石川県の先端)の市でした。
地域 | 1畳当たり家賃(円) |
---|---|
石川県 珠洲市 | ¥694 |
北海道 赤平市 | ¥819 |
北海道 三笠市 | ¥860 |
高知県 室戸市 | ¥929 |
北海道 歌志内市 | ¥968 |
福岡県 嘉麻市 | ¥971 |
秋田県 男鹿市 | ¥975 |
岩手県 陸前高田市 | ¥991 |
北海道 夕張市 | ¥994 |
長崎県 西海市 | ¥998 |
終わりに
高額トップと低額トップを比較すると、大きな差があり驚きました。家賃のみで住む地域を決める人は少ないかもしれません。ただ、場所に捉われない職業の人であれば検討する余地があると思いました。
出典
【政府統計】全国の家賃を政府統計データから調べてみた
「政府の統計窓口:e-Stat」の各種調査から、全国市区町村の家賃を調べました。
[1] 社会・人口統計体系
「都道府県・市区町村のすがた(社会・人口統計体系)」から、都道府県別の家賃(2018年)を取得しました。
[1-1] 民営借家、公営借家、給与住宅の違い
家賃は次の4種類取得できました。
- 民営借家の1畳当たり家賃
- 公営借家の1畳当たり家賃
- 都市再生機構(UR)の1畳当たり家賃
- 給与住宅の1畳当たり家賃
関東地方の都県を比較しすると、東京都が高いことが分かります。また、民営借家と比較して公営借家、給与住宅が安いことも分かります。
[1-2] 1畳当たり家賃を1DKに換算すると?
1畳当たり家賃だとよく分からないので、1DK当たりに換算します。
- 1DKは概ね30m2
- 1畳は1.82405m2
- 1DKは約16.5畳
民営借家で比較すると、東京の高さが際立ちますね。
参考にホームズで立川駅徒歩8分の1DKを見ると、34.2m2でした。この物件は少々広めの1DKに感じます。なので、1DKは概ね30m2と考えて良いでしょう。
この物件の家賃は8.5万円、東京都は9.5万円です。9.5万円は高く感じられるので、都心部分が平均を押し上げているのかもしれません。
[1-3] 全国の都道府県別家賃
関東地方だけでなく、全国の都道府県の家賃も見てみます。なお、桁は千円単位になるように四捨五入しています。
大都市がある都道府県は高い傾向にあり、それ以外は概ね4.0〜4.5万円となっています。
[2] 小売物価統計調査(動向編)
小売物価統計調査では、生活に必要なモノの価格が調査されています。家賃は、毎月の動向を明らかにする「動向編」から取得しました。
[2-1] 1坪あたりの家賃から1DKの家賃に変換
社会・人口統計体系と同様に、公営や都市再生機構の家賃も取得できましたが、今回は民営借家の家賃のみを見ていきます。
単位が1坪(3.3m2)あたりの家賃なので、1DK(30m2)あたりに変換します。
- 1DKは概ね30m2
- 1坪は3.3m2
- 1DKは約9.1坪
[2-2] 調査対象
大まかには次の通りです。詳細は「小売物価統計調査(動向編)関連情報」を参照してください。
- 政令指定都市、県庁所在市
- 上記以外の人口15万以上の市
- 人口5万以上15万未満の市
- 人口5万未満の市・町村
[2-3] 県庁所在市及び人口15万以上の市の家賃
いわゆる大きい都市の家賃です。
「社会・人口統計体系」で見た都道府県別の家賃と同様、首都圏の家賃は高いという結果でした。関西も全体的に高いですが、長崎市が近隣の市の中で群を抜いて高いのは面白いですね。
[2-4] 社会・人口統計体系との違い
「社会・人口統計体系」と比べると、家賃の金額が低いのが気になりました。調査方法の違いによるものかもしれませんが、結論は分かりませんでした。
[社会・人口統計体系] 世帯に配布する調査票甲及び乙並びに調査員が記入する建物調査票により [小売物価統計調査(動向編)] 調査事業所を訪問し、事業主から家賃、延べ面積等を聞き取り
調査方法は下記URLに記載された内容を抜粋しました。住人に聞くのと、事業主(管理会社?)に聞くのとで差があるのかもしれません。また、調査対象の抽出方法が異なるのかもしれません。
[2-5] 人口5万以上15万未満の市の家賃
市によって家賃の金額はまだらです。人口15万以上の市と比較すると底は低く、3万円を切る市が増えています。
[2-6] 人口5万未満の市の家賃
人口5満未満になると家賃が5万円を超える市は無くなり、全体的に低い傾向です。
終わりに
予想通りでしたが、大都市圏、特に首都圏の家賃が高いことが分かりました。もちろん、築年数や立地によって家賃は変わるので、あくまで全体的な傾向ではありますが。
以前であれば、通勤は避けられないものでしたが、コロナ禍によりリモートワークが増えました。大都市圏に住む必要が無いならば、人の少ない地方に住んで家賃を抑えるというのも良い手かもしれません。
[備考] 各調査の概要・調べ方
社会・人口統計体系
社会・人口統計体系では、都道府県・市区町村ごとの様々なデータを見ることができます。
様々なデータの中から家賃を絞り込むのは、以下の画像の通りに行いました。
なお、本データの大元は住宅・土地統計調査です。
項目の定義は以下の通りです。
小売物価統計調査(動向編)
小売物価統計調査では、家賃以外にも米からティッシュペーパーまで、生活に関わる様々なモノの価格が調査されています。
動向編には、月次と年次のデータがありますが、家賃は年次から取得しています。
出典
Python 100行以内で書ける株価のテクニカル分析チャート(pandas-datareader & mplfinance)
Pythonで株価を取得してローソク足チャートを作ったところ、驚くほど簡単に書けました。「pandas-datareader」と「mplfinance」を使用しましたが、ソースコードの行数は60行でした。以下のようなグラフが簡単に作れます。
[1] 株価の取得
以前の記事で紹介した、pandas-datareaderを用いて株価を取得します。
import datetime import pandas_datareader.data as web # ソフトバンクの2021年1月以降の株価 code = '9984.JP' start_date = datetime.datetime(2021, 1, 1) end_date = None # pandas-datareaderでStooqから株価取得 df = web.DataReader(code, 'stooq', start=start_date, end=end_date)
先頭をprintしてみると、次のようなデータが取得できています。
print(df.head()) # Open High Low Close Volume # Date # 2021-04-01 9480 9615 9372 9391 13843700 # 2021-03-31 9084 9362 8995 9330 12246400 # 2021-03-30 9146 9320 9081 9172 12463600 # 2021-03-29 9388 9389 8980 9080 16428700 # 2021-03-26 9202 9369 9131 9238 11754500
[2] ローソク足チャートの表示
「mplfinance」を使ってローソク足チャートを作成します。「mplfinance」が優秀すぎて数行で書けてしまいます。
import mplfinance as mpf # 日付で昇順ソース df = df.sort_index() # ローソク足チャートを表示 mpf.plot(df, type='candle', mav=(5, 25), volume=True, savefig='9984_JP.png')
ポイントは次の通りです。詳細な使用方法は「mplfinance」のGitHubに詳しく載っています。
type='candle'
でローソク足チャートを指定しています。typeを変えるとチャートの形状を変更できます。mav=(5, 25)
で移動平均線の期間を指定しています。今回は5, 25日間の移動平均線を描画します。volume=True
で出来高を描画します。savefig
で保存先のファイル名を指定しています。
GitHub - matplotlib/mplfinance: Financial Markets Data Visualization using Matplotlib
[3] MACDをチャートに追加
テクニカル分析指標の一つであるMACDをチャートに追加します。
[3-1] MACDの算出
MACDの算出方法には何パターンかあるようですが、次の通りにしました。
# MACD exp12 = df['Close'].ewm(span=12, adjust=False).mean() exp26 = df['Close'].ewm(span=26, adjust=False).mean() df['MACD'] = exp12 - exp26 # シグナル df['Signal'] = df['MACD'].rolling(window=9).mean() # ヒストグラム(MACD - シグナル) df['Hist'] = df['MACD'] - df['Signal']
[3-2] MACDをチャート表示
# MACDとシグナルのプロット作成 add_plot = [mpf.make_addplot(df['MACD'], color='m', panel=1, secondary_y=False), mpf.make_addplot(df['Signal'], color='c', panel=1, secondary_y=False), mpf.make_addplot(df['Hist'], type='bar', color='g', panel=1, secondary_y=True)] # ローソク足チャートを表示 mpf.plot(df, type='candle', mav=(5, 25), volume=True, addplot=add_plot, volume_panel=2, savefig='9984_JP.png')
mpf.make_addplot
で追加したいチャートを作り、mpf.plot
の引数addplot
にセットします。
[4] RSIをチャートに追加
テクニカル分析指標の一つであるRSIをチャートに追加します。
[4-1] RSIの算出
RSIは移動平均を取る期間を色々と変えれますが、今回は14日間としています。
# 終値の差分 df_diff = df['Close'].diff() # 値上がり幅と値下がり幅 df_up, df_down = df_diff.copy(), df_diff.copy() df_up[df_up < 0] = 0 df_down[df_down > 0] = 0 df_down = df_down * -1 # 14日間の単純移動平均 sim14_up = df_up.rolling(window=14).mean() sim14_down = df_down.rolling(window=14).mean() # RSI df['RSI'] = sim14_up / (sim14_up + sim14_down) * 100
[4-2] RSIをチャート表示
add_plot
にRSIのチャートを追加します。
# MACDとRSIのプロット作成 add_plot = [mpf.make_addplot(df['MACD'], color='m', panel=1, secondary_y=False), mpf.make_addplot(df['Signal'], color='c', panel=1, secondary_y=False), mpf.make_addplot(df['Hist'], type='bar', color='g', panel=1, secondary_y=True), mpf.make_addplot(df['RSI'], panel=2)] # ローソク足チャートを表示 mpf.plot(df_sort, type='candle', mav=(5, 25), volume=True, addplot=add_plot, volume_panel=3, savefig='9984_JP.png')
[5] チャートの見栄えを変える
「mplfinance」に用意された引数を変えると、チャートの見栄えを変えることも簡単にできます。
# MACDとRSIのプロット作成 add_plot = [mpf.make_addplot(df['MACD'], color='m', panel=1, secondary_y=False), mpf.make_addplot(df['Signal'], color='c', panel=1, secondary_y=False, ylabel='MACD'), mpf.make_addplot(df['Hist'], type='bar', color='g', panel=1, secondary_y=True, ylabel='Hist'), mpf.make_addplot(df['RSI'], panel=2, ylabel='RSI')] # ローソク足チャートを表示 mpf.plot(df, type='candle', mav=(5, 25), volume=True, addplot=add_plot, volume_panel=3, title='9984.JP', figratio=(5, 4), panel_ratios=(6, 3, 3, 2), style='nightclouds', savefig='9984_JP.png')
「mpfinanceのGitHub」と以下の記事を参考にさせてもらいました。
Python mplfinanceでローソク足を作る | novonovo
終わりに
「pandas-datareader」と「mplfinance」を使って、チャートを簡単に描くことができました。MACDやRSIの追加も数十行で行うことができました。
参考資料
移動平均線が進化!MACD(マックディー)の見方と活用法 | 俺たち株の初心者!
RSIの見方・使い方 | テクニカル分析指標 | 指標の見方・使い方 | 投資のノウハウ | 株の達人
GitHub - matplotlib/mplfinance: Financial Markets Data Visualization using Matplotlib
Python mplfinanceでローソク足を作る | novonovo
備考
インストール手順
環境によってインストール手順は異なる場合があります。pip3コマンドが使用できる環境では以下の手順でインストール可能でした。
pip3 install numpy --user pip3 install pandas --user pip3 install matplotlib --user pip3 install pandas-datareader --user pip3 install mplfinance --user
出典
- アイキャッチはGerd AltmannによるPixabayからの画像
【政府統計】係長の給与は500人以上の企業だと3割増し [e-Stat(政府統計): 令和2年職種別民間給与実態調査(2)]
前回に引き続き「令和2年職種別民間給与実態調査」を見ていきます。今回は企業規模により給与がどれくらい変わるかに焦点を絞りました。
わかったこと
- 500人以上企業と100人未満企業とで、平社員の給与は2割前後違う
- 500人以上企業と100人未満企業とで、主任の給与は2〜3割違う
- 500人以上企業と100人未満企業とで、係長の給与は概ね3割違う
[1] 係員の給与
係員はいわゆる平社員です。一つ上の役職は主任です。
[1-1] 事務係員
「50人以上100人未満企業」の平均給与を基準に「100人以上500人未満企業」「500人以上企業」と平均給与を比較しました。
「100人以上500人未満企業」だと1割増し、「500人以上企業」だと2割増しという結果になりました。20代に比べると、30代以降の方が差大きくなっています。
[1-2] 技術係員
技術についても同様に、「100人以上500人未満企業」だと1割増し、「500人以上企業」だと2割増しという結果になっています。
[2] 主任
主任は定義が曖昧ですが、平社員よりも少し出来る人といった感じです。
[2-1] 事務主任
20代前半はデータ数が少なく比較できませんが、30代以降は比較可能です。
平社員(係員)よりも、企業規模による差が大きくなっています。「500人以上企業」だと2.5〜3割増しという結果になっています。「100人以上500人未満企業」は係員と大きな違いはありません。
[2-2] 技術主任
技術は事務と比べて、年齢によるバラつきがあります。大別すれば、「500人以上企業」だと2〜3割増し、「100人以上500人未満企業」は0.5〜1.5増しという結果です。
[3] 係長
係長は本調査の定義では「係の長及び係長級専門職」となっています。
[3-1] 事務係長
20代はデータ数が少なく比較できませんが、30代以降は比較可能です。
主任以下よりも企業規模による差が顕著になっています。「500人以上企業」だと3割前後増しです。
「100人以上500人未満企業」は年齢によって異なっており、年齢が上がるにつれて差が開くという結果になっています。
[3-2] 技術係長
技術も「500人以上企業」だと3割前後増しと、「500人以上企業」の給与の高さが目を引きます。
一方「100人以上500人未満企業」と「50人以上100人未満企業」とで1割程度の違いしかありません。
終わりに
企業規模によって2,3割給与が違うことが分かりました。大企業の方が給与が高いというのは誰もが認知していることですが、具体的な数字を見ると改めて大きな違いだなと感じますね。
出典
*1:mohamed HassanによるPixabayからの画像
【政府統計】事務の方が技術に比べて出世したときに給与が高くなる [e-Stat(政府統計): 令和2年職種別民間給与実態調査(1)]
今回は「令和2年職種別民間給与実態調査」から得られた情報や考察を紹介していきます。2020年4月時点の給与です。
わかったこと
- 初任給は学歴が高い方が金額が高い
- 役職が上になるほど給与も高くなる
- 事務の方が技術に比べて、出世したときに給与が高くなる
- 大企業の方が給与は高い
- 事務・非製造業は管理職と非管理職とで給与の差が大きく開く(課長代理vs係長)
- 技術の方が事務に比べて、給与の年功序列が強い(役職間の差が小さい)
- 事務・製造業は、役職間の給与の差がはっきりしている(役職が上がれば給与はちゃんと上がる)
- 大学卒の方が高校卒に比べて給与が高い
前提条件
調査対象
従業員数50人以上の企業が対象になります。したがって、一般の割合に比べれば、大企業に偏った調査結果であると言えます。
企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の全国の民間事業所。 なお、本年は、新型コロナウイルス感染症に対処する医療現場の厳しい環境に鑑み、 病院は調査対象から除外した。
調査期間
2021年6月29日から9月30日です。
[1] 調査対象の人数
約335万人が対象になっています*2。「労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)12月分結果」によれば、日本の就業者は6,666万人、雇用者は5,984万人です。雇用者の約5%が対象となっています。
また、下記表を元に産業別調査対象者数の割合を概算すると、製造業が38%と大きな割合を占めています。
調査対象となった事業所の規模の割合を比較すると、100人以上500人未満が最も多いです。調査対象が最低50人以上の事業所となっていることからも、大企業にやや偏った調査結果であると言えます。
[2] 初任給
職種、学歴別の初任給です。学歴の高い方が金額が高くなっています。高校卒が最も低く、博士過程終了が最も高くなっています。
職種では技術者が事務員に比べて、やや高い金額です。
[3] 職種別平均支給額
[3-1] 調査人員の割合
[3-2] 職種の定義
- [支店長・工場長] 構成員50人以上の支店(社)の長(取締役兼任者を除く。)
- [事務部長・技術部長] 2課以上又は構成員20人以上の部の長。職能資格等が上記部の長と同等と認められる部の長及び部長級専門職(取締役兼任者を除く。)
- [事務部次長・技術部次長] 上記部長に事故等のあるときの職務代行者。職能資格等が上記部の次長と同等と認められる部の次長及び部次長級専門職。中間職(部長-課長間)。
- [事務課長・技術課長] 2係以上又は構成員10人以上の課の長。職能資格等が上記課の長と同等と認められる課の長及び課長級専門職。
- [事務課長代理・技術課長代理] 上記課長に事故等のあるときの職務代行者。課長に直属し部下に係長等の役職者を有する者。課長に直属し部下4人以上を有する者。職能資格等が上記課長代理と同等と認められる課長代理及び課長代理級専門職。中間職(課長-係長間)。
- [事務係長・技術係長] 係の長及び係長級専門職。
- [事務主任・技術主任] 係長等のいる事業所における主任。係長等のいない事業所における主任のうち、課長代理以上に直属し、部下を有する者。係長等のいない事業所において、職能資格等が上記主任と同等と認められる主任。中間職(係長-係員間)。
主任・係長は定義が曖昧なため調べてみましたが明確な定義が見つかりませんでした。ネットで色々調べてみるに以下のイメージです。
- 主任:一人前
- 係長:管理もするけど管理職の権限は持たない
- 課長代理:ここからが管理職、課長の代行権を持つ
[3-3] 平均支給額
当たり前の結果ですが、役職が上になるほど給与も高くなっています。
用語の定義は次の通りです。
「きまって支給する給与」
基本給はもとより、年齢給、勤続給、地域給、寒冷地手当、能率給、家族手当、住 宅手当、精勤手当、職務手当、通勤手当、役付手当、超過勤務手当、夜勤手当、休日 手当等月ごとに支給される全ての給与を含めたものをいう。
「時間外手当」
きまって支給する給与に含まれ、超過勤務手当、休日手当、宿日直手当、裁量手当 等の時間外手当をいう。
「通勤手当」
きまって支給する給与に含まれ、通勤定期券、ガソリン代などの現物支給されたも のを含めたものをいう。
技術の方が事務よりも時間外手当が高くなっています。技術の方が残業時間が長いということでしょう。
時間外手当と通勤手当を除いた金額は、係長までは技術の方が高く、課長代理以降は事務の方が高くなっています。事務の方が出世するほど給与の伸び幅が大きくなっています。
[3-4] 平均年齢
平均年齢も役職が上になるほど高くなっています。
[4] 年齢階層別平均支給額
[4-1] 職種別
前章でも述べたように、事務の方が出世に伴う給与の伸び幅が大きくなっています。一方、技術は役職が変わっても事務ほどの差はありません。
一方、係員・主任・係長を比較すると技術の方が高い金額となっています。また、係員と主任の差が大きくなっています。
しかし、課長代理以降ですと、事務の方がやや高くなっています。また、技術の方が年齢による差が大きくなっており、若くして出世しても給与が上がりづらい傾向が読み取れます。技術の方が年功序列が強いと言えます。
[4-2] 職種・企業規模別(事務)
企業規模別で見ると、やはり大企業の方が給与は高くなっています。また、前提的な傾向として、係長と課長代理とで差が開いています。管理職になると責任も重くなるので給与も一段階上がるということでしょう。
[4-3] 職種・企業規模別(技術)
企業規模500人以上の場合には、技術も役職によってそれなりに給与の差がありました。係長と課長代理とで差がかなり少ないのは意外でした。管理職か否かで差があるのは事務だけのようです。
企業規模500人未満の場合には、役職が上がっても給与に大きな差がありません。特に、100人未満の場合、本当に差が少なくて驚きました。傾向としては、主任と係長、課長代理と課長との差がほとんどありません。
[4-4] 産業別
製造・非製造で見ると、製造の方が比較的、役職に応じて給与に差が出る傾向が見られます。特に、事務・製造に顕著な傾向です。
非製造は特徴的で、前項までに述べてきた事務と技術間の違いがはっきり見られました。
係長・課長代理間の給与の差が大きいのは、事務・非製造ということがわかりました。
また、役職間で給与の差が少なく年功序列の傾向がみられるのは、技術・非製造です。
[4-5] 学歴
学歴で見ると、大学卒が高校卒に比べて高い傾向にあります。
高校卒の方は課長代理以降の役職と給与とが比例していませんが、理由はわかりませんでした。
技術の方も事務と同様に、大学卒の方が給与が高い傾向にあります。
技術の方は、高校卒の給与が役職と給与とが比例はしていますが、主任から次長で、役職間の給与差が小さくなっています。
終わりに
今回は皆が気になるであろう、給与の統計データを見てきました。一般的に認知されていることですが、学歴が高く大企業の方が給与が高いという結果が見られました。大企業に学歴の高い人が集まりやすいということもあるでしょう。
次回も「令和2年職種別民間給与実態調査」から分かることを紹介します。
出典
*1:mohamed HassanによるPixabayからの画像
*2:正確には3,351,612人
【政府統計】大企業・大卒だと定年退職金の平均は3,000万円を超える [e-Stat(政府統計): 民間企業退職給付調査(4)]
前回に引き続き「民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」の2016年次データを紹介します。
わかったこと
わかったことは次の通りです。
- 勤続年数41年で定年退職する人が最も多い(高卒で60歳定年)
- 定年退職の退職一時金は概ね800〜1,000万円
- 企業年金の受給額は大企業の方が圧倒的に多い
[3] 退職一時金・企業年金の支給状況
[3-1] 退職者数
定年退職者の割合は、勤続年数37年、41年が多いことが分かります。これは、高卒・大卒の人達の多くが60歳で定年に達するためです。18歳で高卒であれば勤続年数41年で、22歳で大卒であれば勤続年数37年で60歳に達します。勤続年数42年も多いことから、当時(2016年の42年前は1974年)は中学卒も多かったことが伺えます。
会社都合退職の人数は、定年退職ほど多くありません。勤続年数30年以降が比較的多いことが分かります。
[3-2] 退職一時金
意外なことに企業規模によって極端な差はありませんでした。勤続年数40年前後では、1,000万円前後が平均です。ただ、調査対象に従業員数50人未満の企業が含まれていないので、そのような企業ではより少ない可能性もあります。
会社都合退職に関しては、従業員数50人から100人未満の標本数が少なく信頼性に欠けます。ただ、会社都合ということもあり定年退職に比べて高い金額を受け取っている傾向があると言えます。
[3-3] 企業年金
退職一時金とは異なり、大企業と中小企業とで大きな差がありました。大卒・大企業の場合、退職一時金と合わせると3,000万円を超えています。
注意点は、そもそも企業年金制度を設けている企業が、従業員の多い企業に偏っていることです。従業員数100人未満の企業の6割以上は企業年金制度を設けていません。
会社都合退職に関しては、標本数が少ないですが、従業員数の多い企業ほど高い金額を受け取れる傾向にあります。
終わりに
大企業の退職金が中小企業に比べて多いという、世間の認識を裏付ける内容でした。これだけ見ると大企業に勤めた方がいいと思ってしまいますが、私は20代のうちから60歳のときのことなんて考える気にはなりませんでした。昔に比べれば、長く勤めて退職金をもらうよりも働けるうちに稼ぐという風潮が強まっている気はします。
出典
【政府統計】企業年金の受給資格は勤続年数や年齢によって決まる [e-Stat(政府統計): 民間企業退職給付調査(3)]
前回に引き続き「民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」の2016年次データを紹介します。
わかったこと
わかったことは次の通りです。
- 大企業になるほど、企業年金制度を設けている場合が多い
- 企業年金の受給資格は、勤続年数が要件となるケースが8割弱を占めている
- 企業年金の受給資格が勤続年数要件のみの場合、勤続年数5年以上で約50%の人が受給資格を得る
- 企業年金の受給資格が勤続年数要件かつ年齢要件の場合、79%が60歳で受給資格を得る
- 企業年金の支給開始時期は、厚生年金支給開始時または定年退職時の人が半数以上を占めている
[2] 退職一時金・企業年金制度の状況
[2-9] 企業年金の種類の状況
大企業になるほど、企業年金制度があるケースが多いです。種類としては、確定給付企業年金(規約型)、確定拠出年金(企業型)が多いです。
確定給付企業年金、確定拠出年金の主な違いは、会社が運用するか自分で運用するかです。確定給付企業年金は会社が運用し、確定拠出年金は自分で運用します。
確定給付企業年金の規約型・基金型の違いは、規約型が母体企業が信託会社・生命保険会社等と契約し管理・運用し、基金型は母体企業とは別に法人を設立して管理・運用します。
[2-10] 企業年金の種類別受給資格の状況
企業年金を受給するための資格は、勤続年数が要件となる場合が多く、加えて年齢も要件となる場合も多いです。
[2-11] 受給資格として勤続年数又は年齢の要件を設けている場合の要件の状況
勤続年数を要件にしている場合、勤続年数要件のみの場合は勤続年数5年以上で約50%の人が受給資格を得ます。勤続年数25年以上であれば95%以上です。一方、勤続年数要件かつ年齢要件の場合、半数以上の人が勤続年数20年以上でないと受給資格が得られません。
年齢要件を設けている場合のほとんどが、勤続年数要件との併用です。年数要件は60歳で受給資格を得るケースが79%と圧倒的に多いです。
60歳になる前に退職したら年金を受給できないのでしょうか? この点は調べてもわかりませんでした。
[2-12] 企業年金の種類別支給開始時期の状況
企業年金の支給開始時期は、厚生年金支給開始時または定年退職時の人が半数以上を占めています。どちらの条件に該当するとしても、大抵の人は65歳までには支給が開始されると言えます。
[2-13] 企業年金の種類別支給期間の状況
企業年金の多くは有期の場合が多いですが、厚生年金基金の場合には終身が7割を超えています。
終身の場合には保証期間が設けられています。保証期間は下記サイトによると次の通りです。
通算企業年金の特長と注意点|通算企業年金のおすすめ|企業年金連合会
保証期間とは、年金受取開始年齢から80歳に達するまでの期間のことを指し、その間に亡くなられたり、病気や災害などの理由があった場合に、選択一時金や死亡一時金を受け取ることができます。
終身ではなく有期の場合は、全体で見ると10年が50%強、20年が30%弱となっています。
終わりに
私が勤めている中小企業は企業年金制度が無いため、馴染みのない内容が多かったです。勤続年数が長いほど高い金額をもらえるのは、退職一時金と同じでした。
次回は、企業規模と勤続年数別の退職金などについて見ていきます。