【読書】人類は老化を克服できるのか
「老化は避けられないもの」多くの方がそのような認識をもっているでしょう。私もあと30年もすれば高齢者になるわけです。しばらくは仕事を続けるものの、そのうちリタイアして年金生活になるのだろうなどと想像します。
「LIFE SPAN」という本を読みましたが、一言で言うなら「老化の見方を変える」本です。
筆者のデビッド・A・シンクレア氏は、ハーバード大学医学大学院の遺伝学の教授で、老化・長寿研究で知られる方です。シンクレア氏は、老化は病気であり治療できる、健康寿命は延ばせるという考えの持ち主です。本書でも老化のメカニズム、老化の克服方法、寿命が延びた先の未来を語っています。
本書で語られる内容の一部は、研究途中であり科学的実証が終わっていないものも数多くあります。なので、全てを鵜呑みにする必要はなく、信じる/信じないは読者の判断で構わないと思います。私も筆者が語る全てを生活に取り入れるつもりはありません。一部は取り入れつつも世間の動向をしばらくは伺います。
老化は全ての人に関わることなので、読んで損のない本だと思います。科学的に実証されるかどうかは時が経たないと分かりませんが、現状の老化・長寿研究の様子を知ることができます。また、科学的実証にはどれくらいかかるか分かりません。10年・20年かかるかもしれません。世間に先んじて健康な老後を送るための生活改善に取り組めるかもしれません。
自分用のメモとして、要点をまとめました。
第1部(過去)
マグナ・スペルステス(生物の祖先)
- マグナ・スペルステス(生物の祖先)は、遺伝子Aと遺伝子Bを持つ。
- 遺伝子Aは、細胞分裂を停止する役割を持つ。しかし、環境が好ましいときは遺伝子Bに抑制される。
- 遺伝子Bは、環境が好ましいときは遺伝子Aを抑制する。抑制することで細胞が増殖される。
- 遺伝子Bは、DNAが壊れるとこれを修復する。遺伝子Aの抑制は解除される。そのときは遺伝子Aのスイッチが入り細胞分裂は抑制される。
なぜ生物には寿命があるのか
- すべての生物にとって資源は限られているため、もてるエネルギーを生殖と長寿のどちらかにだけ振り向けるように進化してきた。
- フリーラジカル説(フリーラジカル=遊離基が遺伝子変異を引き起こすので除去すれば寿命が延びる)は正しくない。遺伝子変異は引き起こすが、老化の主原因とは考えにくい。
老化とはエピゲノム情報の損失
- 生体内には2種類の情報がある。デジタルとアナログ。
- DNAはデジタル方式。アナログ情報はエピゲノムと総称される。
- ゲノム(遺伝情報)はDNAとして保存される。エピゲノムはクロマチンにしまわれる。
- ゲノムがコンピュータなら、エピゲノムはソフトウェア。分裂したばかりの細胞に対して、どの種類の細胞になればいいのかを教える。
長寿遺伝子(サーチュイン)
- ヒトゲノムには二十数個の長寿遺伝子が見つかっている。長寿遺伝子の1つはサーチュインと呼ばれる。
- サーチュインは細胞を制御するシステムの最上流に位置して、生殖とDNA修復を調節している。
- 細胞を損傷させることなく長寿遺伝子を働かせるストレス因子はいくつもある。これをホルミシスと呼ぶ。ある種の運動、絶食、低タンパク質の食事等である。
酵母の老化
- 人のウェルナー症候群は老化につきものの様々な状態が生じる病。
- 原因遺伝子が変異を起こすとウェルナー症候群を発症する。
- 酵母で同様の遺伝子に変異を起こさせたところ、酵母版のウェルナー症候群の症状が見られた。
- 多くの生物の老化は、似たメカニズムだと考えられる。
エピゲノムの変化が老化の原因
- DNAが損傷するとゲノムが不安定になり、ある酵素が持ち場から離れ修復に向かう。エピゲノムが変化し、修復が終わるまでは細胞のアイデンティティと生殖機能が失われる。
- 歳を取りDNAの損傷が増えると、修復に費やす時間が長くなる。エピゲノムの混乱が続き、細胞のアイデンティティが喪失する。結果、細胞が老化する。
サーチュインは災害対応部隊の指揮官
- DNAの安定化、DNAの修復、細胞の生存、代謝、細胞間の情報伝達など様々な問題に対処する。
- 災害が起きたら大挙して急行する、終わればいつもの仕事に戻る。災害はDNAの損傷、いつもの仕事は細胞のアイデンティティを保つこと。
- サーチュインが酷使されると、いつもの仕事が手付かずになる。細胞がアイデンティティを失い、正しく機能しなくなり混乱状態に陥る。
エピゲノムは不安定
- 不安定なのはアナログ情報だから。複製しようとすると多少の情報を失う。
- エピゲノムがデジタルな情報に進化しなかったのは必要がなかったから。
- 遺伝子を確実に次世代に受け渡せる程度まで生き延びられればよい。不老不死までは必要ないというのが進化の選択だった。
出典
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【python】OpenCVでImportErrorが出たときの対処法(Amazon Linux2)
「ImportError: libGL.so.1: cannot open shared object file: No such file or directory」が出たときの対応策です。
環境によって対応策は異なります。紹介するのはAmazon Linux2の対応策です。
環境
事象発生時の状況
import cv2
OpenCVをインポートすると、次のエラーが発生します。
--------------------------------------------------------------------------- ImportError Traceback (most recent call last) /tmp/ipykernel_22658/3138839957.py in <module> ----> 1 import cv2 ~/.local/lib/python3.7/site-packages/cv2/__init__.py in <module> 3 import sys 4 ----> 5 from .cv2 import * 6 from .data import * 7 ImportError: libGL.so.1: cannot open shared object file: No such file or directory
対応策
「mesa-libGL」をyumでインストールすると解決します。
sudo yum -y install mesa-libGL
参考文献
【読書】孫子から現代のビジネスパーソンが学べること
孫子を読みました。孫子の名は所々で耳にしていました。「古い本だけど現代に通用する」というのがよく聞く文言です。
実際に読んでみて、なるほどなと思いました。たしかに現代にも通ずるところがありました。
具体的になり過ぎていない
孫子は兵法書ですが抽象度が高いです。具体的な戦術についても書かれていますが、基本的にそういった内容は少なめです。
「兵とは詭道なり」という文があり、これは「戦争とは敵を騙す行為である」という意味です。これ自体は具体的な戦術は示してはおらず、戦争とは何たるかという考えを示しています。他の文も同様に抽象度の高い内容が多いです。
抽象度が高かったからこそ、現代でも通用する内容になっています。
迅速さは完璧さに勝る
戦争には莫大な出費を要する、これは今も昔も同じでした。紀元前4,5世紀当時は兵糧・外国使節の接待費・装備の材料費などの諸経費がかかりました。
戦争が長期にわたるほど莫大な経費が投じられるため、国家経済が困窮します。戦力は消耗し経済も困窮すると、中立であった諸侯(周辺の地域支配者)につけ入る隙を与えることにもなります。
なので、多少まずい点があっても迅速に切り上げるという事例はあっても、完璧を期したため長引いてしまうという事例は無い、というのが孫子の主張です。
要するに、時間が経つほどリソースを消費するということですね。これは現代ビジネスでも同じで、どんな業種であれ少なくとも人件費はかかります。人件費を普段から意識する人は少ないかもしれませんが、時間をかけ過ぎて失敗する例はいくつもありますね。
上司が8割程度の完成度しか求めていなかったのに、完璧に仕上げようとして時間がかかった。でも、上司に見せてみると上司が求めていたものは違った。このような事例は若い方にありがちです。私も入社1,2年目の頃はやってしまっていました。
他にも、細部にこだわった商品を販売したものの、顧客はそんなところ気にしていなかったなど。いくつも例を挙げることが出来ます。
戦わずして勝利するのが最善の方策
孫子が考える最上の策は「敵国の軍事力を保全したまま勝利する」こと。敵国を撃破して勝利するのは次善の策。
戦争の目的は敵を屈服させることなので、なるべく戦闘を行わずして勝利するのが利益になるということです。
また、軍事力の最高の運用方法は上から順に「敵の策謀を未然に打ち破ること」「敵国と友好国との同盟関係を断ち切ること」「敵の野戦軍を撃破すること」と述べています。
一方、最も悪いのは「敵の城邑を攻撃すること」。相手の城を攻めることです。
戦力による突破が3番目になっていることからも、なるべく戦わずして有利を得ようという考えです。ビジネスで言うと利益を得ることが目的なので、必ずしも相手と正面から競合する必要はないということです。
しかし、戦争とビジネスとは全く同じではありませんし、当時とは時代背景も異なっています。孫子は、敵の策謀を打ち破る、同盟関係を断ち切ることを有効な策としました。ですが、この2つの策は相手にマイナスを与えようという考えです。最近はクリーンな経営が求められていますから、現代ビジネスのトレンドにはそぐわないかもしれません。
トップが組織に害をもたらす原因
君主は国で一番偉い人、最終意識決定をする人です。今で言うと、大統領や首相などです。
実際に戦争を行う将軍と軍に対して、君主がマイナスをもたらす場合があるとされています。それは、君主が軍事に介入してしまうことです。
君主が軍事に詳しいならまだマシですが、軍事に無知な君主が介入することで指揮系統の混乱を招きます。将軍に任せた以上は、将軍を信頼し細かい行動については妨害しないようにしようということです。
これは現代にも通用する考え方ですね。組織はトップが責任を取る以上、トップの考えが最優先というのは大前提としてあります。ただ、トップが口を出し過ぎて現場が混乱したり、作業が後戻りするというのは起こりがちです。
大企業だとトップが現場に出てくることは、そうそうないかもしれません。例えば、課長が課員に指示を出すべき場面で、部長が口出ししてくるケースだとイメージしやすいでしょうか。
危険なリーダーの特徴
孫子は将軍には5つの危険があり、軍を敗死させるとしています。
- 思慮にかけ決死の勇気だけをもつ者
- 勇気に欠け生き延びることしか頭にない者
- 怒りっぽく短気な者
- 名誉を重んじ清廉潔白な者
- 人情深く兵士をいたわる者
1,2,3は分かりやすいですね。
4.は良い部分もあります。ただ、戦争では計略を張り巡らしたり、不利な状況で逃げなければなりません。高潔が過ぎるとそれらができず、軍を勝たせられないというわけです。
5.も一見良さそうです。しかし、戦争では大勢の命を優先するため、時には非情な選択も必要です。また、勝利するために難儀なこともやってもらう場面があります。そういった場面で、遠慮したり自分が代わりにやろうとすると、心身ともに疲労して重要な意思決定ができなくなります。
この5つは、現代のリーダーにも当てはまる気がします。
1.は根性論一辺倒のリーダー、2.は自身の保身だけを考えるリーダー、3.は感情的なリーダー、4.は融通の利かないリーダー、5.は優し過ぎて注意できないリーダー。
完璧なリーダーというのは存在しないと思いますが、この五つにはなるべく当てはまらないようにしたいですね。
信頼も刑罰も大事
当時の戦争において、兵の数は重要な要素ではありました。ですが、圧倒的に多い必要はなく、統率が取れていれば充分に勝利することができました。
統率の取れた軍隊を作るために、将軍は兵の信頼を得ている必要がありました。信頼感がなければ、いざという場面で兵が指示通りに動いてくれません。
一方で刑罰をもって威厳を示すことも重要でした。軍律に背くものを公正に罰しなければ、兵になめられます。なめられれば緊張感は無くなり、日頃の教練も身の入らないものになります。
現代においても適度な緊張感は大切ですよね。当然体罰などパワハラはNGであるものの、命令やルールに違反した者に対して、毅然とした態度をとる必要はあります。
終わりに
まだ紙もない竹簡(書写用の竹の札)の時代に、このような本があったのはすごいなと思いました。インターネットや電子機器はおろか、書籍も無い時代ですからね。
我々は多くの知識・情報から学ぶことができます。現代と孫子の時代とではインプットの量が圧倒的に違います。インプットが少ない中で、兵法を抽象のレベルで思考し体系的にまとめることはすごいことです。
出典
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【読書】アメリカ軍も失敗から学んでいる
世界でも有数の軍事力を誇るアメリカ軍ですが、過去には失敗もありました。
アメリカ軍を非難したいわけではありません。あのアメリカ軍ですら失敗するということです。優秀な人・組織ですら失敗するのだから、多くの人・組織は失敗して当然ということです。アメリカ軍の失敗から学び、自分の生活や仕事に活かせることはあるんじゃないかと思い、その内容を簡単にまとめました。
本記事は「戦略の世界史(上)」「マンガ経営戦略全史 革新篇」の内容を参考にした内容になります。技術が大きく進歩しても人間の本質はそこまで大きく変わらないので、過去の出来事から学ぶことはあると改めて感じました。
https://www.amazon.co.jp/%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%8F%B2-%E4%B8%8A-%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%83%BB%E6%94%BF%E6%B2%BB%E3%83%BB%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9-%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%B3/dp/453217645Xwww.amazon.co.jp
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%88%A6%E7%95%A5%E5%85%A8%E5%8F%B2-%E9%9D%A9%E6%96%B0%E7%AF%87-%E4%B8%89%E8%B0%B7-%E5%AE%8F%E6%B2%BB/dp/4569830501www.amazon.co.jp
ベトナム戦争
科学的手法の導入
第二次世界大戦ごろ、科学的手法の有用性がイギリスで証明されました。対空防御にレーダーが用いられましたが、物理学よりも古典派経済学に近い手法が用いられました。オペレーションズリサーチと呼ばれる手法が、レーダー以外の軍事活動においても著しい進歩をもたらしました。
オペレーションズ・リサーチは、数学的・統計的モデル、アルゴリズムの利用などによって、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう決定する科学的技法である。
オペレーションズ・リサーチ - Wikipediaより引用(2021/07/22)
核兵器の登場もあり、当時の軍事問題は以前と比べてだいぶ複雑化していました。そこで、大量のデータを解析する手段として科学的手法が有用視されはじめました。
ランド研究所
第二次世界大戦後、アメリカの「ランド研究所」が科学的手法を軍事問題に応用する上で中心的な役割を果たしました。ランド研究所はアメリカ空軍の資金援助のもと、オペレーションズリサーチの開発を行う組織として設立されました。やがて防衛や公共政策の問題に取り組む組織へと変化していきました。
コンピューター技術の急速な進歩もあり、複雑な問題に数学アプローチを適用することが現実的に可能となりました。定量分析が説得力と信頼性を持った手法へと発展しました。
1960年代の国防総省では定量分析が最良の方法とされ、ランド研究所出身の人々も活躍しました。それまで軍部が重要視していたこと推進しようとしたことに異議が唱えられました。
科学的手法の限界
ベトナム戦争において科学的手法の限界が示されました。複雑な政治的背景をもつ戦争においては適切な手法ではありませんでした。当初アメリカが持っていた認識と、現地の実情はかけ離れていました。大規模な戦闘を前提に立てられた計画では限界がありました。
理論と行動の世界は違った
文民研究者たちは、理論を行動の世界でも簡単に実践できると過信していたと非難され、現場から身を引きました。以降、戦術と戦略の中間段階に位置する作戦レベルと呼ぶ概念に重要性が置かれました。火力に頼る消耗戦が重視され過ぎていたことから、行動力に頼る機動戦の重要性が見直されました。
イラク戦争
IT化による変革
1991年の湾岸戦争では、GPSと無線カメラを搭載したミサイルによって精密な爆撃が行われました。最新ハイテク兵器と従来兵器との差は大きく、圧倒的な勝利をもたらしました。
センサー・ネットワーク・ディスプレイ技術・シミュレーション能力により、情報優位を獲得するというものでした。数の重要性が相対的に低下し、能力の高い兵士が重視されるようになりました。以降、アメリカ軍は情報化と少数精鋭化を推し進めます。
イラク戦争
2003年のイラク戦争においても、アメリカ軍ら多国籍軍は圧倒的な勝利を収めました。しかし、ここからが苦難の始まりでした。イラク占領後、ゲリラやテロが頻発に発生しました。ゲリラやテロに対しては最新兵器は通用しませんでした。
戦闘面においては、市街地戦において最新兵器が十分に機能しませんでした。荒野での戦闘とは異なり、市街地戦では遮蔽物や紛らわしいものが多く、ハイテク兵器による敵の識別や偵察が十分に行えなかったためです。自爆テロや即席爆弾に対しては無人偵察機・軍事衛星は役に立ちませんでした。また、敵が現地住民に紛れたことも影響しました。アメリカ軍には敵と現地住民の見分けがつきませんでした。
政治的な面においては、現地住民の協力を得られなかったことが影響しました。アメリカ兵の数が十分ではなかったため、アメリカ兵が移動したあと敵はすぐに戻ることができました。また、アメリカ兵は反乱鎮圧に対する教育を十分に受けていませんでした。交戦を避ける、挑発に乗らない、警戒する現地住民に手を差し伸べる方法を採る、といった訓練が必要でした。
理想の組織が原因
ティム・ハーフォードは「アダプト思考」で理想の組織の落とし穴を看破していました。当日のアメリカ国防省が目指した理想の組織は次のものでした。
・統制の取れたチーム
志を同じくしたチームが強力にリーダーを補佐する
・統一的大局観
現場からあらゆる情報を収集し、中央で戦略を立案・決定する
・厳格な指揮命令系統
責任を明確にして上意下達でそれらを遵守させる
現場の状況に合わせて独自の対応策を考えて試すことも、成功例をボトムアップで伝え全体を変えていくことも許されていませんでした。これは第二次世界大戦での日本軍の失敗と似た内容でした。
終わりに
学べることは2つありました。1つめは理論と現実は違うこと。自分がやったことも無いことを批判する人がいますが、これはベトナム戦争時の研究者たちが陥った罠と同じですね。理論も当然大事なのですが、行動し現実を知ることなしには机上の空論で終わってしまいます。理論と行動の駆使することが重要だと思いました。
2つめは、組織においてトップダウンもボトムアップも重要ということです。イラク戦争でアメリカ軍はトップダウン偏重になり、現場で得た情報がフィードバックされませんでした。ただ軍も会社もトップダウンが基本のピラミッド構造組織です。ボトムアップが過ぎて、権限を持たない人が好き勝手言い始めたら組織が崩壊します。なので、トップダウンを原則としつつも硬直しない組織である必要があると思います。
ピラミッド構造の下にいる人がやれることは、状況を正確に伝えることと自分の意見を言うことでしょう。とはいえこの問題に関しては、組織の上部にいる人達の責任に依るところが大きいと思います。
出典
- アイキャッチはZack CulverによるPixabayからの画像
【Python】株価のテクニカル分析指標から売買タイミングを自動計算
以前に「pandas-datareader」と「mplfinance」を用いて、テクニカル分析チャートを作成しました。その際に「MACD」や「RSI」などのテクニカル分析指標を算出しました。
今回は、これらの指標から売買のタイミングを計算します。
1銘柄ずつチャートを目視していくのは大変です。注目した方がよい銘柄を自動で割り出して、その銘柄のチャートだけを見るようにして手間を省きたいのです。
- [1] 株価の取得、テクニカル分析指標の算出
- [2] 今回使用するデータ
- [3] ゴールデンクロス・デッドクロス(MACD)
- [4] ボトムアウト・ピークアウト(ヒストグラム)
- [5] RSI
- 終わりに
- 出典
[1] 株価の取得、テクニカル分析指標の算出
以前の記事で紹介した内容で行います。
ここまで済めば、テクニカル分析チャートまでは作れます。
[2] 今回使用するデータ
ソフトバンク(9984.JP)の2021/04/01〜07/13の株価を使用します。
[3] ゴールデンクロス・デッドクロス(MACD)
MACDとシグナルが重なるときが、売買のタイミングと言われています。
詳しい説明は、下記サイト等を参考にしてみてください。
[3-1] ソースコード
MACDとシグナルが重なるのは差が0になるタイミングです。つまりヒストグラムが0を跨ぐタイミングです。
# ヒストグラムと日付を取り出す hists = df['Hist'] dates = df.index # 日数分ループ for i in range(1, hists.size): # 2日分取り出し h1 = hists.iloc[i-1] h2 = hists.iloc[i] # ゴールデンクロス・デッドクロスを判定 if h1 < 0 < h2: # ゴールデンクロス print(f'{dates[i]:%Y-%m-%d} {code} ゴールデンクロス {h1:.1f},{h2:.1f}') elif h1 > 0 > h2: # デッドクロス print(f'{dates[i]:%Y-%m-%d} {code} デッドクロス {h1:.1f},{h2:.1f}')
以下の出力結果が得られます。
# 2021-04-20 9984.JP デッドクロス 13.8,-12.3 # 2021-06-03 9984.JP ゴールデンクロス -0.1,15.5 # 2021-07-07 9984.JP デッドクロス 1.6,-10.4 # 2021-07-13 9984.JP ゴールデンクロス -6.9
[3-2] チャート
出力結果をチャート上に示すと、赤枠と青枠の部分になります。赤枠がゴールデンクロス、青枠がデッドクロスです。
[3-3] 計算通りに売買したら成功したか
04/20の売りは、5月に入り株価が下落したため成功と言えます。一方、06/03の売りは7月中旬時点では成功とは言えません。
また、07/07, 07/13と短期間にデッドクロス・ゴールデンクロスが発生しています。頻繁に発生するような場合は、売買タイミングと考えるのは難しそうです。
[4] ボトムアウト・ピークアウト(ヒストグラム)
ヒストグラムが天井・天底をうつときも売買の目安と言われています。
ゴールデンクロス・デッドクロスよりも反応が早いと言われています。詳しい説明は、下記サイト等を参考にしてみてください。
[4-1] ソースコード
ヒストグラムを用いて計算しますが、小さな変化を拾いすぎないように以下の条件としています。
- ボトムアウト:2日連続で減少後に2日連続で上昇 and 負値
- ピークアウト:2日連続で上昇後に2日連続で減少 and 正値
減少・上昇は日毎の差分をh5d.diff()
で取得し、差分の正負で判断しています。
# ヒストグラムと日付を取り出す hists = df['Hist'] dates = df.index # 日数分ループ for i in range(0, hists.size-5): # 5日分取り出し h5d = hists.iloc[i:i+5] # 日毎の差分を取得 hdiff = h5d.diff() # ボトムアウト・ピークアウトを判定 if (hdiff[1] < 0) and (hdiff[2] < 0) and \ (hdiff[3] > 0) and (hdiff[4] > 0) and \ (h5d[2] < 0): # ボトムアウト hist_values = f'{h5d[0]:.1f},{h5d[1]:.1f},{h5d[2]:.1f},{h5d[3]:.1f},{h5d[4]:.1f}' print(f'{dates[i+2]:%Y-%m-%d} {code} ボトムアウト {hist_values}') elif (hdiff[1] > 0) and (hdiff[2] > 0) and \ (hdiff[3] < 0) and (hdiff[4] < 0) and \ (h5d[2] > 0): # ピークアウト hist_values = f'{h5d[0]:.1f},{h5d[1]:.1f},{h5d[2]:.1f},{h5d[3]:.1f},{h5d[4]:.1f}' print(f'{dates[i+2]:%Y-%m-%d} {code} ピークアウト {hist_values}')```
以下の出力結果が得られます。
# 2021-04-30 9984.JP ボトムアウト -18.8,-30.0,-37.2,-30.4,-29.4 # 2021-05-17 9984.JP ボトムアウト -180.7,-221.7,-246.1,-234.2,-222.5 # 2021-06-16 9984.JP ピークアウト 41.9,45.6,47.1,40.6,32.8
参考までに、条件を2日連続ではなく1日とすると、ボトムアウト5回・ピークアウト5回という結果になります。
[4-2] チャート
出力結果をチャート上に示すと、赤枠と青枠の部分になります。
[4-3] 計算通りに売買したら成功したか
- 2021/04/30 ボトムアウトで買い:失敗
- 2021/05/17 ボトムアウトで買い:失敗
- 2021/06/16 ピークアウトで売り:成功
少なくとも今回の例では、良い結果が得られませんでした
[4-4] 条件を変えたらどうなるか
2日連続上昇後に減少の条件から「2日連続」を無くしてみます。
# 2021-04-21 9984.JP ボトムアウト -12.3,-23.9,-19.8 # 2021-04-23 9984.JP ボトムアウト -19.8,-23.8,-16.4 # 2021-04-30 9984.JP ボトムアウト -30.0,-37.2,-30.4 # 2021-05-17 9984.JP ボトムアウト -221.7,-246.1,-234.2 # 2021-06-07 9984.JP ピークアウト 20.9,30.9,29.9 # 2021-06-16 9984.JP ピークアウト 45.6,47.1,40.6 # 2021-06-28 9984.JP ピークアウト 33.4,47.1,45.9 # 2021-06-30 9984.JP ピークアウト 45.9,47.2,44.7 # 2021-07-02 9984.JP ピークアウト 44.7,46.8,17.1 # 2021-07-09 9984.JP ボトムアウト -17.9,-22.5,-6.9
売買のタイミングは判断できませんが、傾向を見るのには役立つかもしれません。ボトムアウト・ピークアウトは傾向を見るにとどめるのが良さそうです。
ソースコードは次の通りです。
# ヒストグラムと日付を取り出す hists = df['Hist'] dates = df.index # 日数分ループ for i in range(0, hists.size-3): # 3日分取り出し h3d = hists.iloc[i:i+3] # 日毎の差分を取得 hdiff = h3d.diff() # ボトムアウト・ピークアウトを判定 if (hdiff[1] < 0 < hdiff[2]) and (h3d[1] < 0): # ボトムアウト hist_values = f'{h3d[0]:.1f},{h3d[1]:.1f},{h3d[2]:.1f}' print(f'{dates[i+1]:%Y-%m-%d} {code} ボトムアウト {hist_values}') elif (hdiff[1] > 0 > hdiff[2]) and (h3d[1] > 0): # ピークアウト hist_values = f'{h3d[0]:.1f},{h3d[1]:.1f},{h3d[2]:.1f}' print(f'{dates[i+1]:%Y-%m-%d} {code} ピークアウト {hist_values}')
[5] RSI
RSIは70%以上だと買われすぎ、30%以下だと売られすぎと言われています。
- RSIが70%以上:買われすぎなので売りのタイミング
- RSIが30%以下:売られすぎなので買いのタイミング
詳しい説明は、下記サイト等を参考にしてみてください。
[5-1] ソースコード
単純にRSIの値で判断すれば良いので、これまで紹介した2つに比べてだいぶシンプルです。
# 日数分ループ for i, rsi in enumerate(df['RSI']): if rsi > 70: # RSI > 70% print(f'{df.index[i]} RSI>70% {rsi:.1f}') elif rsi < 30: # RSI < 30% print(f'{df.index[i]} RSI<30% {rsi:.1f}')
以下の出力結果が得られます。この例ではRSIが70%以上になりませんでした。
# 2021-05-13 00:00:00 RSI<30% 24.4 # 2021-05-14 00:00:00 RSI<30% 27.6 # 2021-05-17 00:00:00 RSI<30% 24.1 # 2021-05-18 00:00:00 RSI<30% 25.1 # 2021-05-19 00:00:00 RSI<30% 24.4 # 2021-05-20 00:00:00 RSI<30% 21.8 # 2021-05-21 00:00:00 RSI<30% 22.7 # 2021-05-24 00:00:00 RSI<30% 22.4 # 2021-05-25 00:00:00 RSI<30% 23.6 # 2021-05-26 00:00:00 RSI<30% 18.7 # 2021-05-27 00:00:00 RSI<30% 17.8 # 2021-05-28 00:00:00 RSI<30% 21.1 # 2021-05-31 00:00:00 RSI<30% 25.5 # 2021-06-17 00:00:00 RSI<30% 25.7 # 2021-06-18 00:00:00 RSI<30% 27.6 # 2021-06-21 00:00:00 RSI<30% 23.2 # 2021-06-23 00:00:00 RSI<30% 27.0
[5-2] チャート
出力結果をチャート上に示すと、赤線がRSI=30%のラインです。
[5-3] 計算通りに売買したら成功したか
- 2021/05/13〜05/31 RSI<30%で買い:失敗
- 2021/06/17〜06/23 RSI<30%で買い:失敗
売られすぎ(RSI<30%)の期間が二度ありました。このタイミングで買っていたら、いずれも失敗でした。
RSIは横ばいの相場で有効と言われています。この例では下降トレンドであったため効力を発揮しなかったものと思われます。
[5-4] 別銘柄の場合はどうか
JR東日本(9020.JP)なら、どういう結果になったのか見てみます。
- 2021/04/21〜04/22 RSI<30%で買い:成功
- 2021/06/02〜06/14 RSI>70%で売り:成功
- 2021/06/29〜06/30 RSI<30%で買い:成功
逆に上手くいき過ぎていて気持ちが悪いです。
MACDを用いた指標で売買しても成功していました。
終わりに
テクニカル分析指標だけで売買を判断するは難しいようです。ですが、判断材料としては十分に使えそうです。
売買のタイミングを感情で左右してまうと失敗します。とくに慣れない頃はそうでした。客観的な指標も用いて、冷静に判断できればと思いました。
出典
【読書】経営戦略におけるポジショニング派とケイパビリティ派の違い
前記事に引き続き「マンガ 経営戦略全史 確立篇」の内容を紹介します。「マンガ 経営戦略全史 革新篇」の内容も若干含んでいます。
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC-%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%88%A6%E7%95%A5%E5%85%A8%E5%8F%B2-%E7%A2%BA%E7%AB%8B%E7%AF%87-%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%88%A6%E7%95%A5%E5%85%A8%E5%8F%B2-%E4%B8%89%E8%B0%B7%E5%AE%8F%E6%B2%BB-ebook/dp/B01J5OGZXW/ref=tmm_kin_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=www.amazon.co.jp
https://predora005.hatenablog.com/entry/2021/07/15/190000predora005.hatenablog.com
ポジショニング派とケイパビリティ派
経営戦略論には「ポジショニング派」と「ケイパビリティ派」という考え方があります。
ポジショニング派は「儲かる市場を選んで敵に対して優位な場所を占めること」を重視する考え方。ニッチな市場で差別化を図る、大きな市場で低コストで勝負するなどです。高級車や高級ブランドは差別化の一例ですし、コンビニのプライベートブランドは低コストが売りですね。
ケイパビリティ派は「差別化できる経営資源が競争優位性につながる」と言う考え方。戦略や組織構造だけでなく、人材・スキル・経営スタイルといった経営資源とその使い方が重要ということです。高度経済成長期のキャノンやホンダがよく例に挙げられています。今で言うと、AppleやAmazonなどが該当すると思います。ポジショニングの要素もありますが、他社と明らかに異なる特徴を持った企業ですよね。
ポジショニング派のマイケル・ポーター
マイケル・ポーターが残したツールで有名なのは「5フォース分析」「戦略3類型」です。「5フォース分析」は業界構造を理解し「儲けられる市場」を判断するためのものです。
「戦略3類型」では「儲かる位置取り」を示しました。
5フォース分析で「儲けられる市場」を判断し、戦略3類型で「儲かる位置取り」を選択するということです。
ケイパビリティ派のジェイ・バーニー
ジェイ・バーニーは「RBV (Resource-Based-View」(資源ベースの戦略論)で有名な人物です。バーニーは同じ業界にいながら企業間でパフォーマンスに差があるのは「経営資源の使い方」に差があるからだと考えました。そして、経営資源を式として表しました。
経営資源の使い方が「持続的な競争優位性につながる」と考え「VRIOフレームワーク」を提唱しました。
RBVは外的環境変化が取り入れられる構造になっていないなど、欠点もある理論でした。発展途上の理論ではありましたが、ケイパビリティ派にとって中核コンセプトになりました。
結局はどちらも必要
ポジショニング派とケイパビリティ派、どちらを重視すべきかが競われていました。1,991年にリチャード・ルメルトが発表した論文によれば、ポジショニング15%, ケイパビリティ45%, 不確定要素40%でした。ケイパビリティの方が長期的に見ると重要ということです。
1,998年にミンツバーグが示した結論は「明確な答えはなくどちらが重要かは場合による」でした。企業の発展段階を一例として、発展期はポジショニングを重視、安定期にはケイパビリティを重視することを示していました。
終わりに
「マンガ 経営戦略全史 確立篇」はマンガということもあり、サクッと読めました。ポーターやドラッガーなど名前だけ聞いたことのあった人物が、どんな理論を提唱したのか知れて満足いく内容でした。
出典
- アイキャッチはGerd AltmannによるPixabayからの画像
【読書】金だけで人が仕事を続けられないことは100年前から分かっていた
仕事をする目的の一つは収入を得ることです。もちろん万人がそうというわけではなく、仕事を生きがいとしている人や、既に働かなくてもいいだけの資産を築きあげた人もいるでしょう。例外をあげればキリがありませんが、多くの人は程度の差こそあれ金銭目的に仕事をしているでしょう。生活するためには金銭が必要です。
では金銭目的だけで辛い仕事ができるかと言えば、そうでもありません。働かなければ明日が来ない状況だとしたらできるかもしれませんが、大抵の人はそうではないでしょう。人が金銭目的だけでは働けないことは、100年近く前に分かっていました。
「マンガ 経営戦略全史 確立篇」では、20世紀初頭以降の経営戦略をマンガで紹介しています。人が金銭目的だけで働けないことも本書で紹介されていた内容の一つになります。テイラーやドラッガーといった、後世に名を残した人達の成果とエピソードが紹介されています。
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC-%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%88%A6%E7%95%A5%E5%85%A8%E5%8F%B2-%E7%A2%BA%E7%AB%8B%E7%AF%87-%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%88%A6%E7%95%A5%E5%85%A8%E5%8F%B2-%E4%B8%89%E8%B0%B7%E5%AE%8F%E6%B2%BB-ebook/dp/B01J5OGZXW/ref=tmm_kin_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=www.amazon.co.jp
T型フォードが豊かな大衆を生み出した
自動車が発明されたのは1,885年です。当時はまだ非常に高価であり、お金持ちしか買えませんでした。今は誰でも買える時代になっていますが、発売当初は違いました。1,900年の平均世帯年収は750ドル、自動車の価格は3,000ドル以上でした。
フォードは1,903年に設立されました。試行錯誤を重ねた末、1,908年にT型フォードを950ドルで販売開始します。それでも創立者のヘンリーフォードはまだ高いと感じており、さらなる低価格化を目指します。
低コストと高い信頼性を実現するために「作業の標準化・マニュアル化」を導入しました。それまで熟練工が行っていた作業を、単純作業に分割しラインで組み立てる方式です。今ではよく知られた自動車のライン生産方式は、この頃は当たり前ではありませんでした。
効率的な大量生産システムを確立した結果、1,925年には260ドルで販売するに至りました。このときの平均世帯年収は2,000ドルだったため、年収の8分の1で自動車が買えるようになりました。
自動車は大衆の足となりました。郊外に一軒家を立てて自動車で通勤する「豊かな大衆」が誕生しました。
人は単純作業に耐えられない
フォードの工場は金銭面で非常に好待遇でした。日給5ドルであり、夫婦共働きであれば3,000ドルの年収になりました。平均の1.5倍の年収です。そのため就職希望者が殺到したものの、高い離職率となってしまいました。
理由は単純作業でした。タイヤフレームに鉄輪をはめる工程は、一人がタイヤフレームと鉄輪を重ね、もう1人はそれをプラスに挟んで一体化します。そのペースは4秒に1回、1日8時間で7,000回に及びました。
機械的な単純作業に多くの人は耐えられませんでした。経済的動機(高収入目的)の限界が、世に明らかになりました。
エイトン・メイヨー
エルトン・メイヨーというオーストラリア出身の学者がいました。メイヨーは1,923年、アメリカ・フィラデルフィアの紡績工場での調査を依頼されました。紡績部門の離職率が他部門に比べてとても高いため、原因を探ってほしいという内容です。
原因はフォードの工場と似ており、「単純さ」と「孤独さ」からくる精神疲労でした。そこで、メイヨーは休憩時間の導入を提案しました。具体的な内容は工場の人達が議論して、1日4回10分ずつの休憩をとることに決まりました。数ヶ月後、離職率は250%から5%程度まで低下し生産性も向上しました。
ホーソン実験
1,927年、メイヨーは電話機製造会社ウェスタン・エレクトロニックのホーソン工場で実験に取り組みました。最初は照明の明暗と作業効率の関係の実験でした。それまでは照明が明るいほど作業効率が上がるとされていました。結果は予想していなかったもので、照明を明るくしても暗くしても作業効率が上昇しました。
続いて、リレー組み立て作業の女工100人の中から6人を選んで実験が行われました。賃金、休憩、軽食、部屋の温度・湿度といった労働条件を変更し、生産性との関係が調査されました。この実験も予想外なことに、労働条件がどのように変わろうと生産性が上がり続けました。6人に選ばれたことによるプライドと連帯感が、労働条件に打ち勝ちました。
さらに、従業員に対する大規模な面接調査が行われました。最終的に工場全体の2万人以上にまで調査が及びました。面接は途中から現場マネジャーが行うようになり、面接も自由に会話する雑談のようなものに変わりました。結果は意外なことに、面接をしただけで生産性が向上しました。従業員は話しているうちに自分の不満が根拠のあるものなのか自ら理解し、現場マネジャーは聴くうちに部下たちの状況を把握し対処することで自らを高めていました。
メイヨーの結論
メイヨーは様々な実験から以下の結論を得ました。
- ヒトは経済的対価により、社会的欲求の充足を重視する
- ヒトの行動は合理的でなく感情に大きく左右される
- ヒトは公式な組織よりも、非公式な組織に影響されやすい
- ヒトの労働意欲はゆえに、客観的な職場環境の良し悪しより、職場での人間関係に左右される
終わりに
仕事にやりがいを求める人が増えたと言われていますが、人は昔から金銭以外の目的も求めていたわけです。テクノロジーの発展もあり生活は豊かになっていますが、すぐに慣れて満足できなくなるのが人間なんだなと感じます。
T型フォードが販売される前の時代は、フォードの工場と比較にならないくらい労働環境が悪いものでした。それに比べて単純作業で8時間労働というのは好環境だったのですが、豊かさを知ってしまった人達には耐えられなかったのです。歴史は繰り返すと言いますが、昔も今も人間の本質的な部分は変わらないと感じるエピソードでした。