どこにでもいる30代SEの学習ブログ

主にプログラミング関連の学習内容。読んだ本の感想や株式投資についても書いてます。

【読書】現代のビジネスパーソンがクラウゼヴィッツから学べることは何か

前記事に引き続き「戦略の世界史(上)」で印象に残ったところを紹介します。

www.amazon.co.jp

https://predora005.hatenablog.com/entry/2021/07/07/190000predora005.hatenablog.com

ナポレオンの時代

ナポレオンといえばフランス革命で有名な人物です。フランス革命が起きた1700年代末は戦争の形が変わりつつありました。大きな変化は、国民軍の誕生です。それまでは騎士や傭兵が活躍していましたが、国民の徴兵・志願により軍隊が形成されました。騎士や傭兵などのプロに比べれば練度で劣るなど問題もあったようですが、大規模な軍隊となりました。

また、技術の発展により長距離移動が発達も合わさり、戦争が大規模化しました。それまでの陣取りを目的とした制限戦争から、国家同士の全面戦争へと変容しました。

クラウゼヴィッツ戦争論

クラウゼヴィッツ1800年代前半、ナポレオン戦争の時代に生きた人物です。戦争論」という書籍で有名な人物です。クラウゼヴィッツプロイセンの軍人でした。フランスとは対立する立場にありました。戦争論は主に40代の頃に執筆し、51歳で亡くなりました。

戦争論」では戦争とはなにかという本質が描かれました。戦争の方法・戦術ではないため、時代を経ても廃れず後世においても影響を及ぼしました。

戦争の三要素

戦争は特異な三位一体を為していると、クラウゼヴィッツは考えました。三要素の相互作用によって戦争が起こるという考え方です。

  1. 原初的な暴力、憎悪、敵意
  2. 賭けの要素 (偶然性や蓋然性)
  3. 政策に対する従属性 (戦争は政策の手段)

摩擦という概念

三要素に加えてクラウゼヴィッツ「摩擦」という概念を取り入れました。戦争では予想できなかった無数の小さな出来事が起き、それらが重なることでまったく推測できなかった諸現象が引き起こされる。当初の見込みを下回り、目標のはるか手前までしか達しないのは常であるということです。

つまり実際の物事は、机上の計画通りには進まないということです。いま考えると当たり前な気もしますが、当時の軍事思想では明確化されていませんでした。摩擦という概念を取り入れたことは、軍事思想の発展への大きな寄与とされています。

戦略に意味はないのか?

計画通りに進まないのであれば、戦略に意味はないのかと考えてしまいます。しかし、作戦の明確な計画を立てることは重要だとクラウゼヴィッツは述べました。そして、その計画を実行に移したら修正すべきではないと説きました。その理由として3つの要因を挙げています。

1つめは、何もかもが予測できないわけではないからです。予測不要なものもありますが、予測できるものもあります。天候や奇策は予測できませんが、敵国の状況や兵力や地形といったことは事前に予測できます。予測可能な要素をもとに、確率的に考えることはできるということです。

2つめは、情報は不確かなものだからです。戦争中に得られる情報は不確実なものが多く、悲観的な方向に偏りがちである。当初の計画に自身を失いかねないが、自らの判断を信じた方がよいということです。これは現代のような通信手段がなかった当時の時代背景が影響しています。

3つめは、どちらの陣営も摩擦の影響を受けるから。敵も摩擦の影響により、当初の計画通りに行かない場合がある。どちらがより摩擦に対処し克服できるかが、勝敗に寄与するということです。

規模は大事

ここまで戦略は重要という話をしてきました。ですがクラウゼヴィッツは、勝利のために最も頼りになるのは「数の優位性」だと説いています。「二倍の戦力はすぐれた指揮官の能力に匹敵しうる」と述べました。これは指揮官の戦略が重要であることを示していますが、それ以上に戦力が重要であるということです。

ただし、両陣営の個々の戦力に大きな差がないことが前提です。ハイテク兵器が使われる近代の戦争では、必ずしも当てはまらないでしょう。

勝利の限界点

それ以上攻撃を続けると、優位だった形成が逆転する時点を意味します。この言葉の意味は、ナポレオンのロシア遠征の事例から窺い知れます。

ナポレオン軍はロシアに侵攻し、モスクワを制圧しました。ですが、ロシア軍は国の存続のためにモスクワを犠牲にすることに決めていました。後に各所で火がおこり、町の三分の二が焼けました。ナポレオン軍は期待していた食糧が得られず、加えてロシアの冬の寒さに耐えられませんでした。結果フランスへ退却することになりましたが、帰路は困難を伴い多くの犠牲が出ました。

現代人がクラウゼヴィッツから学べることは何か

私個人が、クラウゼヴィッツの戦略論から学べると思った点は2つあります。

1つめは、予測できないことへの対応力です。「摩擦」の項で物事は計画通りに進まないとされていますが、それはビジネスの世界でも同じです。事前に勝率の高いだろう計画を立て、実際に動きだしたら状況を見つつ対応する点は変わらないと思いました。違うと感じたのは、情報の正確さと早さです。1800年代では情報は不確かなものとされていましたが、現代では情報収集と有効活用が必要でしょう。

2つめは、戦略だけでも規模だけでもダメということです。私が改めて言うまでもなく、昔からの大企業が新興企業に負けること、存在が消えることは珍しくありません。GAFAMは創業されてから50年も経っていません。一時的には規模で勝てても、長期的に勝てるわけではありません。

一方、戦略だけでも勝てません。勝ちの定義にも依りますが、数人のスタートアップ企業がGAFAMと真っ向勝負できるかというと勝率はかなり低いでしょう。特定の領域で勝つことは可能だと思いますが、規模が重要というのも確かなことです。

出典