どこにでもいる30代SEの学習ブログ

主にプログラミング関連の学習内容。読んだ本の感想や株式投資についても書いてます。

【読書】孫子から現代のビジネスパーソンが学べること

孫子を読みました。孫子の名は所々で耳にしていました。「古い本だけど現代に通用する」というのがよく聞く文言です。

実際に読んでみて、なるほどなと思いました。たしかに現代にも通ずるところがありました。

www.amazon.co.jp

具体的になり過ぎていない

孫子兵法書ですが抽象度が高いです。具体的な戦術についても書かれていますが、基本的にそういった内容は少なめです。

「兵とは詭道なり」という文があり、これは「戦争とは敵を騙す行為である」という意味です。これ自体は具体的な戦術は示してはおらず、戦争とは何たるかという考えを示しています。他の文も同様に抽象度の高い内容が多いです。

抽象度が高かったからこそ、現代でも通用する内容になっています。

迅速さは完璧さに勝る

戦争には莫大な出費を要する、これは今も昔も同じでした。紀元前4,5世紀当時は兵糧・外国使節接待費・装備の材料費などの諸経費がかかりました。

戦争が長期にわたるほど莫大な経費が投じられるため、国家経済が困窮します。戦力は消耗し経済も困窮すると、中立であった諸侯(周辺の地域支配者)につけ入る隙を与えることにもなります。

なので、多少まずい点があっても迅速に切り上げるという事例はあっても、完璧を期したため長引いてしまうという事例は無い、というのが孫子の主張です。

要するに、時間が経つほどリソースを消費するということですね。これは現代ビジネスでも同じで、どんな業種であれ少なくとも人件費はかかります。人件費を普段から意識する人は少ないかもしれませんが、時間をかけ過ぎて失敗する例はいくつもありますね。

上司が8割程度の完成度しか求めていなかったのに、完璧に仕上げようとして時間がかかった。でも、上司に見せてみると上司が求めていたものは違った。このような事例は若い方にありがちです。私も入社1,2年目の頃はやってしまっていました。

他にも、細部にこだわった商品を販売したものの、顧客はそんなところ気にしていなかったなど。いくつも例を挙げることが出来ます。

戦わずして勝利するのが最善の方策

孫子が考える最上の策は「敵国の軍事力を保全したまま勝利する」こと。敵国を撃破して勝利するのは次善の策。

戦争の目的は敵を屈服させることなので、なるべく戦闘を行わずして勝利するのが利益になるということです。

また、軍事力の最高の運用方法は上から順に「敵の策謀を未然に打ち破ること」「敵国と友好国との同盟関係を断ち切ること」「敵の野戦軍を撃破すること」と述べています。

一方、最も悪いのは「敵の城邑を攻撃すること」。相手の城を攻めることです。

戦力による突破が3番目になっていることからも、なるべく戦わずして有利を得ようという考えです。ビジネスで言うと利益を得ることが目的なので、必ずしも相手と正面から競合する必要はないということです。

しかし、戦争とビジネスとは全く同じではありませんし、当時とは時代背景も異なっています。孫子は、敵の策謀を打ち破る、同盟関係を断ち切ることを有効な策としました。ですが、この2つの策は相手にマイナスを与えようという考えです。最近はクリーンな経営が求められていますから、現代ビジネスのトレンドにはそぐわないかもしれません。

トップが組織に害をもたらす原因

君主は国で一番偉い人、最終意識決定をする人です。今で言うと、大統領や首相などです。

実際に戦争を行う将軍と軍に対して、君主がマイナスをもたらす場合があるとされています。それは、君主が軍事に介入してしまうことです。

君主が軍事に詳しいならまだマシですが、軍事に無知な君主が介入することで指揮系統の混乱を招きます。将軍に任せた以上は、将軍を信頼し細かい行動については妨害しないようにしようということです。

これは現代にも通用する考え方ですね。組織はトップが責任を取る以上、トップの考えが最優先というのは大前提としてあります。ただ、トップが口を出し過ぎて現場が混乱したり、作業が後戻りするというのは起こりがちです。

大企業だとトップが現場に出てくることは、そうそうないかもしれません。例えば、課長が課員に指示を出すべき場面で、部長が口出ししてくるケースだとイメージしやすいでしょうか。

危険なリーダーの特徴

孫子将軍には5つの危険があり、軍を敗死させるとしています。

  1. 思慮にかけ決死の勇気だけをもつ者
  2. 勇気に欠け生き延びることしか頭にない者
  3. 怒りっぽく短気な者
  4. 名誉を重んじ清廉潔白な者
  5. 人情深く兵士をいたわる者

1,2,3は分かりやすいですね。

4.は良い部分もあります。ただ、戦争では計略を張り巡らしたり、不利な状況で逃げなければなりません。高潔が過ぎるとそれらができず、軍を勝たせられないというわけです。

5.も一見良さそうです。しかし、戦争では大勢の命を優先するため、時には非情な選択も必要です。また、勝利するために難儀なこともやってもらう場面があります。そういった場面で、遠慮したり自分が代わりにやろうとすると、心身ともに疲労して重要な意思決定ができなくなります。

この5つは、現代のリーダーにも当てはまる気がします。

1.は根性論一辺倒のリーダー、2.は自身の保身だけを考えるリーダー、3.は感情的なリーダー、4.は融通の利かないリーダー、5.は優し過ぎて注意できないリーダー。

完璧なリーダーというのは存在しないと思いますが、この五つにはなるべく当てはまらないようにしたいですね。

信頼も刑罰も大事

当時の戦争において、兵の数は重要な要素ではありました。ですが、圧倒的に多い必要はなく、統率が取れていれば充分に勝利することができました。

統率の取れた軍隊を作るために、将軍は兵の信頼を得ている必要がありました。信頼感がなければ、いざという場面で兵が指示通りに動いてくれません。

一方で刑罰をもって威厳を示すことも重要でした。軍律に背くものを公正に罰しなければ、兵になめられます。なめられれば緊張感は無くなり、日頃の教練も身の入らないものになります。

現代においても適度な緊張感は大切ですよね。当然体罰などパワハラはNGであるものの、命令やルールに違反した者に対して、毅然とした態度をとる必要はあります。

終わりに

まだ紙もない竹簡(書写用の竹の札)の時代に、このような本があったのはすごいなと思いました。インターネットや電子機器はおろか、書籍も無い時代ですからね。

我々は多くの知識・情報から学ぶことができます。現代と孫子の時代とではインプットの量が圧倒的に違います。インプットが少ない中で、兵法を抽象のレベルで思考し体系的にまとめることはすごいことです。

出典