どこにでもいる30代SEの学習ブログ

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【読書】人類は老化を克服できるのか

「老化は避けられないもの」多くの方がそのような認識をもっているでしょう。私もあと30年もすれば高齢者になるわけです。しばらくは仕事を続けるものの、そのうちリタイアして年金生活になるのだろうなどと想像します。

「LIFE SPAN」という本を読みましたが、一言で言うなら「老化の見方を変える」本です。

筆者のデビッド・A・シンクレア氏は、ハーバード大学医学大学院の遺伝学の教授で、老化・長寿研究で知られる方です。シンクレア氏は、老化は病気であり治療できる、健康寿命は延ばせるという考えの持ち主です。本書でも老化のメカニズム、老化の克服方法、寿命が延びた先の未来を語っています。

本書で語られる内容の一部は、研究途中であり科学的実証が終わっていないものも数多くあります。なので、全てを鵜呑みにする必要はなく、信じる/信じないは読者の判断で構わないと思います。私も筆者が語る全てを生活に取り入れるつもりはありません。一部は取り入れつつも世間の動向をしばらくは伺います。

老化は全ての人に関わることなので、読んで損のない本だと思います。科学的に実証されるかどうかは時が経たないと分かりませんが、現状の老化・長寿研究の様子を知ることができます。また、科学的実証にはどれくらいかかるか分かりません。10年・20年かかるかもしれません。世間に先んじて健康な老後を送るための生活改善に取り組めるかもしれません。

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自分用のメモとして、要点をまとめました。

第1部(過去)

マグナ・スペルステス(生物の祖先)

  • マグナ・スペルステス(生物の祖先)は、遺伝子Aと遺伝子Bを持つ。
  • 遺伝子Aは、細胞分裂を停止する役割を持つ。しかし、環境が好ましいときは遺伝子Bに抑制される。
  • 遺伝子Bは、環境が好ましいときは遺伝子Aを抑制する。抑制することで細胞が増殖される。
  • 遺伝子Bは、DNAが壊れるとこれを修復する。遺伝子Aの抑制は解除される。そのときは遺伝子Aのスイッチが入り細胞分裂は抑制される。

なぜ生物には寿命があるのか

  • すべての生物にとって資源は限られているため、もてるエネルギーを生殖と長寿のどちらかにだけ振り向けるように進化してきた。
  • フリーラジカル説(フリーラジカル=遊離基が遺伝子変異を引き起こすので除去すれば寿命が延びる)は正しくない。遺伝子変異は引き起こすが、老化の主原因とは考えにくい。

老化とはエピゲノム情報の損失

  • 生体内には2種類の情報がある。デジタルとアナログ。
  • DNAはデジタル方式。アナログ情報はエピゲノムと総称される。
  • ゲノム(遺伝情報)はDNAとして保存される。エピゲノムはクロマチンにしまわれる。
  • ゲノムがコンピュータなら、エピゲノムはソフトウェア。分裂したばかりの細胞に対して、どの種類の細胞になればいいのかを教える。

長寿遺伝子(サーチュイン)

  • ヒトゲノムには二十数個の長寿遺伝子が見つかっている。長寿遺伝子の1つはサーチュインと呼ばれる。
  • サーチュインは細胞を制御するシステムの最上流に位置して、生殖とDNA修復を調節している。
  • 細胞を損傷させることなく長寿遺伝子を働かせるストレス因子はいくつもある。これをホルミシスと呼ぶ。ある種の運動、絶食、低タンパク質の食事等である。

酵母の老化

  • 人のウェルナー症候群は老化につきものの様々な状態が生じる病。
  • 原因遺伝子が変異を起こすとウェルナー症候群を発症する。
  • 酵母で同様の遺伝子に変異を起こさせたところ、酵母版のウェルナー症候群の症状が見られた。
  • 多くの生物の老化は、似たメカニズムだと考えられる。

エピゲノムの変化が老化の原因

  • DNAが損傷するとゲノムが不安定になり、ある酵素が持ち場から離れ修復に向かう。エピゲノムが変化し、修復が終わるまでは細胞のアイデンティティと生殖機能が失われる。
  • 歳を取りDNAの損傷が増えると、修復に費やす時間が長くなる。エピゲノムの混乱が続き、細胞のアイデンティティが喪失する。結果、細胞が老化する。

サーチュインは災害対応部隊の指揮官

  • DNAの安定化、DNAの修復、細胞の生存、代謝、細胞間の情報伝達など様々な問題に対処する。
  • 災害が起きたら大挙して急行する、終わればいつもの仕事に戻る。災害はDNAの損傷、いつもの仕事は細胞のアイデンティティを保つこと。
  • サーチュインが酷使されると、いつもの仕事が手付かずになる。細胞がアイデンティティを失い、正しく機能しなくなり混乱状態に陥る。

エピゲノムは不安定

  • 不安定なのはアナログ情報だから。複製しようとすると多少の情報を失う。
  • エピゲノムがデジタルな情報に進化しなかったのは必要がなかったから。
  • 遺伝子を確実に次世代に受け渡せる程度まで生き延びられればよい。不老不死までは必要ないというのが進化の選択だった。

出典

アイキャッチArek SochaによるPixabayからの画像