鉄道業界の株価予想(2020年12月)
<鉄道業界の株価予想(2020年12月)>
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前回までに行ったスクレイピングで得た情報も取り入れつつ、株価予想をしていきます。
コロナウィルスの影響を大きく受けている鉄道業界の株価予想をします*2。
※ 株式投資はくれぐれも自己責任でお願いします。
[1] 2020年の株価推移
コロナウィルスの影響で株価は大きく下落しています。
特に新幹線事業を行っているJR九州・JR東日本・JR東海・JR西日本の下落幅が大きいです。 それ以外は各社に依りけりです。東急は年初と比較して40%近く下落していますが、他社は最大30%弱の下落幅に留まっています。
[2] JR東日本の状況
JR東日本の決算情報から、新幹線事業を持つ企業の状況を見ていきます。
[2-1] セグメント別の収益
鉄道会社は運輸収入*3だけで稼いでるわけではありません。不動産事業やサービス事業でも稼いでいます。例えば、JR東日本は駅ビル・オフィスビル・ホテルなどの不動産を所持しています。また、アトレやエキュートなどの小売業も積極的に行っています。
コロナウィルスの影響が無い、2019年3月期の決算情報から収益の割合を見てみます。運輸事業が営業収益(売上)・営業利益ともに 70%近くを占めています。
運輸事業の中での内訳を見ると、在来線が6割、新幹線が3割程度です。つまり、JR東日本の収益の40%は在来線、20%は新幹線ということです。
[2-2] 2020年第2四半期の実績
2020年4月〜9月の実績は、営業収益が50%減です。特に新幹線の輸送量は前年度比70%減であり、コロナウィルスの影響が顕著です。不動産事業は前年同期比と比較して30%減、サービス事業は50%減となっています。
2020年通期の純利益は、4,000億円マイナスの予想です。コロナウィルスの影響が軽減されれば業績は戻っていくと思いますが、しばらくは厳しい状況が続きそうです。2020年3月期の純利益が約2,000億円ですから、かなり大きいマイナスです。
[3] 近鉄GHDの状況
続いて、JR系と比較して株価の落込みが小さい、近鉄GHDの決算状況を見ていきます。
近鉄グループホールディングス株式会社|株主・投資家情報|IR資料|決算説明会
[3-1] セグメント別の収益
JR東日本と同様に、コロナウィルスの影響が無い、2019年3月期の決算情報から収益の割合を見てみます。運輸事業が占める比率は、営業収益が17%, 営業利益が49%です。JR東日本の68%, 70%と比較すると、運輸事業への依存度は低いことが分かります。
[3-2] 2020年第2四半期の実績
2020年4月〜9月の実績は、営業収益が54%減です。2020年通期の純利益は、310億円マイナスの予想です。50%減収という点は、JR東日本と変わりません。
セグメント別の営業収益を見ると、運輸が40%減、不動産が20%、流通が25%減、ホテル・レジャーが90%減です。
運輸の影響はJR東日本と比べて小さいのですが、ホテル・レジャーの減益がかなり大きいと予想されています。ホテル・レジャーの営業利益は360億円のマイナス予想になっています。
[4] 2016年からの株価推移
2016年1月4日の株価を基準とした、株価の上昇率はグラフの通りです。
全体的にみると、2020年初頭までは20%程度上昇し、2020年に入ってから大きく下落しています。
2016年1月から2020年1月までの間に、TOPIXは20%近く上昇しました。 TOPIXと同じ上昇率なので、鉄道業界が目立って浮き沈みはしていないと言えます。
[5] 鉄道輸送量の推移
政府の統計ページ e-Statより、鉄道輸送量の年度別推移を見てみます。緩やかに上昇していましたが、2019年度に減少に転じています。日本の人口は減少し続けているので、今後大きく増えていくことは期待できません。緩やかに減少していくでしょう。
鉄道業界の主な収益は運輸収入です。輸送量が減れば運輸収入も減りますので、鉄道業界が大きく成長することは見込めないわけです。成長するとしたら別セグメントが成長するか海外展開でしょう。
[6] 今後の株価予想
しばらくは低調な状態が続きそうです。本格的に回復するのは、コロナウィルスのワクチン接種が始まってからでしょう。
JR系と民鉄で比較すると、民鉄の方が低迷が続くと思います。ホテル・レジャー事業のマイナスが大きいからです。数年間は国内旅行の減少、インバウンドの減少は戻らないと予想しています。
一方、JR系はコロナウィルスの影響が落ち着けば、運輸収入はだいぶ戻るでしょう。株価も元に戻っていくと予想できます。ただし、今後大きな成長が見込める業界ではありません。株価が上昇するとしても、日経平均やTOPIXと近い上昇率で推移すると思われます。