【政府統計】大企業のほうが退職一時金と企業年金の両方を設けている [e-Stat(政府統計): 民間企業退職給付調査(2)]
前回に引き続き「民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」の2016年次データを紹介します。
わかったこと
わかったことは次の通りです。
- 9割以上の企業が退職給付制度を設けている
- 退職一時金を設けている企業が8割で、企業年金を設けている企業は5割
- 大企業になるほど、退職一時金と企業年金の両方を設けている割合が高くなる
- 退職一時金のうち、大企業のほとんどは社内準備だが、中小企業だと中小企業退職金共済の割合が増える
- 勤続年数が増えるほど、退職一時金は多くもらえる
- 定年前退職(早期退職や希望退職)の優遇制度を設けている企業は少ない
[2] 退職一時金・企業年金制度の状況
[2-1] 退職給付制度の普及状況
9割以上の企業が退職給付制度を設けています。もっとも割合の少ない50人〜99人の企業でも87%は退職給付制度があります。
退職給付制度の内訳は、企業規模によって大きく異なります。大企業ほど退職一時金と企業年金の併用が多く、中小企業ほど退職一時金のみの割合が多いです。
[2-2] 企業年金導入時の原資の状況
私の理解不足で内容がはっきりとは理解できていません。恐らく、企業年金を導入した場合のみに該当する話で、その原資が何かの話です。退職一時金から充当する場合が最も多く、企業年金用に別途原資を拠出する割合は少ないということだと思います。
[2-3] 退職給付債務(PBO)計算上の割引率の状況
割引率については以下のサイトの説明が分かりやすかったです。
割引率とは、将来の価値を現在の価値に直すために用いる率のことをいいます。利回りを考慮すれば現在の通貨の価値と将来の通貨の価値とでは価値が違うために、将来の通貨の価値を現在の通貨の価値に換算するために用いる率のことを指します。
500人未満の企業では、退職給付債務を設定していない企業が多数派です。一方、500人以上の企業では設定している場合の方が多いです。
設定している場合の割引率は、1.0%未満の場合が多いです。割引率は債券の利回りを参考にするとされています。米国債 10年の利回りが1%くらいなので、あまりに割引率が高いと、本当に大丈夫なんだろうかと心配になってしまいますね。
[2-4] 退職給付制度がない理由の状況
[2-5] 退職一時金制度の種類と算定方式の状況
退職一時金制度のある企業が8割です。
退職一時金制度の内訳は、社内準備が多いです。ただし、中小企業の場合は中小企業退職金共済を利用する割合が増えています。社内準備と併用、もしくは、共済のみの割合が増えるようです。
[2-6] 退職一時金(社内準備)における算定方式別、退職事由別、勤続年数別平均累積支給率の状況
基本給を基礎とする場合、退職一時金は一般的に以下の式で計算されます。
(退職一時金) = (退職時の基本給) × (支給率)
仮に、勤続35年で定年を迎えたとき、基本給が30万円なら、30×62.4=1,872万円を退職金として受け取れます。そこから税金が引かれます。
別テーブル方式の場合は、基本給ではなく勤続年数に応じた基準額がベースとなります。勤続年数に応じて、支給率が増えるのは基本給と変わりません。
[2-7] 定年前退職者の退職一時金優遇制度の状況
定年前退職(早期退職や希望退職をすべて含めたもの)の優遇制度については、社員1,000人以上の企業では40%に存在するものの、100人未満の企業では5%に満たないです。
[2-8] 早期退職優遇制度及び希望退職制度の退職一時金の割増率の状況
早期退職の優遇については、年齢が高く定年に近い方が割増率は低いです。勤続年数が高くなるにつれて貰える退職一時金が増えるため、割増率が低くなっているのでしょう。
希望退職制度については、ブランクとなっている箇所が多いです。希望退職制度を設けている企業は少ないのかもしれません。
終わりに
勤続年数が長いほど退職金が多くもらえることなど、今回は一般的な認識を裏付けるデータでした。
次回も引き続き、退職金や企業年金について見ていきます。