【政府統計】中小企業ほど定年後の再雇用率が高い [e-Stat(政府統計): 民間企業退職給付調査(1)]
以前、e-Stat(政府統計の総合窓口)で様々な統計データが見れることを紹介しました。
今回は「民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」の2016年次のデータから得られた情報や考察を紹介していきます。
わかったこと
わかったことは次の通りです。
- 大企業ほど定年年齢60歳の割合が多い
- 8割以上の企業は、定年制の変更予定が無い
- 96%以上の企業は継続雇用制度があり、そのうち87%以上は再雇用である
- 中小企業ほど定年後の再雇用率が高い
- 再雇用のうちフルタイム再雇用の割合が9割以上
前提条件
民間企業の勤務条件制度等調査とは
民間企業の勤務条件制度等調査は、国家公務員の勤務条件検討のための基礎資料を得ることを目的とした調査で、民間企業を対象とし毎年実施されます。
この調査では、民間企業における労働時間、休業・休暇、福利厚生、退職管理及び災害補償法定外給付等の諸制度を調査し、その結果をとりまとめの上提供しています。
調査対象
調査対象は「常勤の従業員数が50人以上の企業」が対象です。そのため、小規模事業者は含まれません。就業者数のおよそ4分の1は含まれないと考えて良いでしょう。
また、全企業を調査したわけではなく、層化無作為抽出された企業が対象です。標本企業7,355社のうち有効な回答のあった4,493社について集計が行われています。
平成28年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)
調査時期
2016年10月1日〜11月30日です。4年半前の調査なので、当時と現在とでは若干異なっているかも知れません。
[1] 定年制と定年退職者の継続雇用の状況
[1-1] 定年制の状況
大企業ほど定年年齢が低く、中小企業になるほど高くなる傾向にあります。
[1-2] 定年制の今後の変更予定の状況
2016年時点のデータですが、定年年齢の引き上げ等の変更を検討していない企業が8割です。
[1-3] 継続雇用制度の状況
96%以上の企業は継続雇用制度があります。
継続雇用制度の内訳はほとんどが再雇用制度です。中小企業になるほど勤務延長制度の内訳が増えています。
再雇用と勤務延長の違いは、人事院の用語解説によると次の通りです。
「再雇用制度」とは、定年年齢に到達した従業員を一旦退職させた後、再び雇用することをいい、雇用形態の名称、身分上の取扱い等(常勤、非常勤、嘱託等)は問わない。
「勤務延長制度」とは、定年年齢に到達した従業員を、退職させることなく、引き続き常勤の従業員として雇用することをいう。
「特殊関係」とは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)第9条第2項において、継続雇用制度に含まれるものとされているものいう。
[1-4] 再雇用者の割合の状況
社員数の多い企業の方が定年退職者が多いのは当然の結果ですね。ただ、次のグラフを見ると、社員数だけが要因ではありませんでした。
中小企業の方が、定年後に再雇用となる割合が高いことが分かります。中小企業の方が収入が低い傾向にありますから、年金受給が始まる65歳までは労働を続けるというのは納得できます。
[1-5] フルタイム再雇用者の割合の状況
再雇用者のうちフルタイムの割合がかなり多いです。1,000人以上の企業ですと割合は減っていますが、7割以上の企業は100%フルタイム再雇用です。
[1-6] 再雇用者の勤務形態別人数割合の状況
大企業の方がフルタイム再雇用の割合が多いのは意外でした。一つ前のデータでは、大企業の100%フルタイム再雇用が少なかったです。しかし、よく考えれば、定年退職者の数が多いため、100%フルタイム再雇用は成立しにくいのでした。
終わりに
従業員数50人以上の企業が対象なので、日本の実態を正確に表しているとは言えません。自営業の方なども含まれないわけですし。
ただ、裾野を広げすぎると収拾がつかなくなるのも理解は出来ます。前提条件を踏まえた上で、引き続きe-Statのデータを見ていきます。
次回は、退職金や企業年金について見ていきます。