どこにでもいる30代SEの学習ブログ

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【読書】戦略は人類よりも前から存在した

「戦略の世界史(上)」という本を読みました。「戦略」の本ですが、皆さんが想像する意味とは違うと思います。私が最初に思い浮かべたのは、経営戦略やマーケティング戦略、軍事戦略です。後半では紹介されていますが、始まりはチンパンジーからでした。

チンパンジーはピンと来ないかもしれませんが、紀元前以前の人類であれば歴史の授業で学んだことがあるはずです。昔の人類には、戦争はあっても経営なんてものは存在しませんでした。戦争でもハイテク兵器は当然存在しておらず、剣や弓で戦っていました。そんな時代から戦略は存在していました。

「戦略の世界史(上)」は歴史の本です。神話や哲学的な要素も含まれます。戦略は主に政治や戦争と関連してきました。なので、人類がどういう風に政治や戦争を捉えてきたのか知るのには良い本です。

決して読みやすい本ではありませんでした。読みやすい文章とは言えず、読み終えるのには骨が折れました。しかし面白い内容ではありましたので、いくつか印象に残ったところを書き残していきます。

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政治の起源はチンパンジーまでさかのぼる

チンパンジーにも社会が存在します。アルファオスを頂点としたコロニーで行動します。コロニーには階層序列があるわけですが、肉体的な力関係だけで築かれるわけではありません。

アルファオスは権力闘争によって交代します。世襲制であったり、同じオスが亡くなるまで保持するわけではありません。権力闘争では、欺き行為や同盟関係といった戦略が用いられていました。

挑発や威嚇により自分の方が強いように見せたり、別のオスと手を組んでアルファオスを蹴落とすといった行動が行われました。現代の戦略に比べれば原始的ですが、戦略の類はチンパンジーの時代からすでに存在していたわけです。

また、別のコロニーとの争いでも戦略が用いられていました。例えば、縄張り境界のパトロールです。チンパンジーには力関係を見きわめる力がありました。

トロール中に弱そうな標的を見つけた場合は、集団かつ不意打ちで攻撃していました。一方、少数でのパトロールで、敵の大集団に出くわすと逃げていました。同数の集団に対しては、戦いを避けて視覚的・聴覚的な示威行動を示していました。

本書では以下のようにまとめられています。

これらの特徴は、紛争を招く社会構造の中から生じている。戦略的な行動には、強烈な印象を与えたり、欺いたりすることで、敵あるいは味方になる可能性がある他者の行動を左右できるように、そうした相手の際立った特性を認識し、その置かれた状況をおもんぱかる力が必要だ。最も効果的な戦略は、暴力だけに頼るのではなく(暴力は優位性を誇示したり、攻撃性を表したりする手段として使えるが)、同盟関係を組む能力を生かすことである。
ローレンス・フリードマン. 戦略の世界史(上) 戦争・政治・ビジネス (戦略の世界史 戦争・政治・ビジネス) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.477-481). Kindle 版.

古代ギリシャにおける戦略

人間の戦略は、古代ギリシャ時代には存在していました。古代ギリシャより前は、神々に忠実に従うことこそ最良の戦略とされていました。しかし、紀元前5世紀にギリシャ啓蒙が起きた時代には変わりました。物事は神々ではなく人間の行動と決断によって動くという考え方が生まれました。

このころには国家が誕生していました。国家間の戦争はそれまでの戦争よりも複雑化しており、ひとりの英雄によって勝利できる規模ではなくなりました。協調や計画が必要になり、優れた指導力を発揮できる将が求められました。

これは戦闘面に限った話でなく、他国との同盟など政治面も含みます。戦闘面で優れていたとしても、周りの国家がすべて敵となれば数の暴力に負けてしまいます。この頃は原始的な戦い方でり、現代よりも数がより重要だった背景もあります。

哲学者の登場

政治で影響力を発揮するには弁舌が必要でした。優れた戦略を策定しても、それを言葉で明確に示せなければ人々を説得できないからです。肉体的な力ではなく、言葉がより力を持ち始めたのがこの時代です。

紀元前4世紀ごろには政治的な弁論術ではなく、倫理的な真理を追求する哲学が力を持ち始めました。ソクラテスプラトンと言えば、知っている方も多いでしょう。この時代に、哲学という専門的職業分野が確立されました。

終わりに

現代と共通する点が2つありましたね。1つめは、単純な力技では数には勝てないこと。周りを味方に付ける、勝機を伺い不利な戦いを避ける点は同じですね。

2つめは、言葉が重要ということ。仕事で言えば、上司の言葉に説得力がなければ部下は十分な成果を出すことができませんね。言う通りやれというだけの上司もイヤですし、単純に説明下手なのもイヤですよね。自分も気をつけなければと思いました。

出典