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【読書】孫子が読み継がれる理由

前記事に引き続き「戦略の世界史(上)」で印象に残ったところを紹介します。

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https://predora005.hatenablog.com/entry/2021/07/05/190000predora005.hatenablog.com

戦略と策略の違い

goo辞書によれば、策略は相手を貶めるネガティブイメージがあります。それは古代ローマにおいても同様でした。

戦略とは「1 戦争に勝つための総合的・長期的な計略。」「2 組織などを運営していくについて、将来を見通しての方策。」
策略とは「自分の目的を達成するために相手をおとしいれるはかりごと。計略。」

しかしながら、策略にも批判に該当しないものがあるとされていました。現代でも、人のためになる嘘なら許されるという考え方もありますね。古代ローマ人の歴史家ウァレリウス・マクシムスによれば、次の6項が該当します。

  1. 士気を高めるための「健全な嘘」
  2. 内部から敵をおとしいれるニセ亡命者
  3. 包囲している側の士気をくじくために包囲されている側が用いる心理的策略
  4. 自軍が敵の一軍と対峙していると見せかけておいて、敵の別の一軍を二倍の戦力で攻撃する計略
  5. 敵を混乱させておいて奇襲をしかける作戦
  6. 自国の都市を包囲しようとしている敵国の都市を包囲する奇策

ローレンス・フリードマン. 戦略の世界史(上) 戦争・政治・ビジネス (戦略の世界史 戦争・政治・ビジネス) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1365-1370). Kindle 版. より抜粋

古代ローマでは、「戦略」「策略」は戦争と結びつけて考えられていました。自国の利益になるなら許されるという考え方でした。一方、現代では許されませんね。現代では戦争に直接関わる人は少ないです。古代と現代とで「戦略」に対するイメージは異なるということです。

孫子が読み継がれる理由

孫子は紀元前500年ごろに中国で書かれた兵法書です。だいぶ古い本ですが現代でも参考になると言われています。著名な起業家が参考にしたと言われていますし、孫子を紹介する記事や書籍も多く目にします。

孫子の根底にあるテーマは「戦わずに敵を屈服させる」ことにあります。最も効果的なところで力を使う策略の名手たれと述べています。

最上の戦い方は「謀を伐つ(敵の計略を未然に防ぐこと」。次に「交(敵と連合国との外交関係)を絶つこと」。次が「兵(敵の軍)を攻撃すること」。最も稚劣なのは「敵の城を包囲すること」としています。いかに戦わずして有利な状況を作るか、を重要視していますね。

悪い例として、危険な指揮官の典型例も5つ挙げています。

  1. 決死の覚悟ばかりで思慮に欠ける者
  2. 生き延びることしか考えていない、勇気に欠ける者
  3. 怒りっぽく短気な者
  4. 名誉を重んじる清廉潔白な者
  5. 人情深く兵士をいたわる者

ローレンス・フリードマン. 戦略の世界史(上) 戦争・政治・ビジネス (戦略の世界史 戦争・政治・ビジネス) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1419-1421). Kindle 版.

5.は一見良さそうに見えますが、兵士の世話に煩い本分を見失うということです。これは現代の指揮官にも当てはまると思いました。

孫子は軍事手法の戦術を書いた本でありません。もし具体的な戦術を示した本だったなら、現代には語り継がれていなかったでしょう。紀元前500年と現代ではあまりにも時代背景が異なりますから、現代ではまったく役に立たなかったでしょう。

当時、孫子を学ぶことはいいこと尽くめだったように思います。しかし、敵も孫子を学んでいた場合、相手も同じことをしてくるため優位性は失われます。これは現代ビジネスでも同じですね。一時的な優位を築いても、競合が同じ情報・技術を得れば優位性が無くなるというのはよくあることです。

策略の難しさ

紀元前においては、策略は必要なものとされていました。しかし、実際に策略を用いることには困難が伴いました。

自分の支配下にある人を騙すことは比較的簡単です。自分も相手を理解しており、相手も自分のことを信頼する傾向が強いためです。しかし、味方を騙す行為は避難の対象になります。一方、敵を騙すことは容認されがちです。ですが、敵を騙すほうが味方を騙すよりも難しいです。

また、ひとたび策略家という評判が絶つと警戒されることになります。そうすると、策略を成功する可能性は低くなります。

そのため、策略は小規模かつ個人的な形で用いた場合に最も効果を発揮しました。大規模なケースでは、一時的かつ限定的な優位を築くのに留まりました。やがて戦争が大規模化するに伴い、策略よりも武力の方が重視されるようになっていきます。

終わりに

策略は賛否両論ありますし、現代では法律などのルールを守らなければなりません。しかし何も考えず力で正面突破するのではなく、相手を知り策を練ることは現代でも重要ですね。そういった意味で、現代でも孫子から学ぶことが多くあるということでしょう。

出典